めっき工程の向流多段水洗(多段リンス)と導電率・pH管理|水使用量削減と法令対応にHI 520活用

アプリケーションノート

めっき工程の向流多段水洗(多段リンス)と導電率・pH管理の重要性|水使用量削減の実践(HI 520活用例)

導入:日本のめっき工場に求められる水質管理

日本のめっき工場(ニッケル、亜鉛、クロムなど)では、水質汚濁防止法にもとづく排水基準の遵守が求められ、近年は環境対応やコスト面からも水使用量の削減排水負荷の低減が重要になっています。こうした背景から、洗浄効率と節水を両立できる向流多段水洗(向流洗浄/多段リンス)が多く利用されています。

向流多段水洗(向流洗浄/多段リンス)とは

向流多段水洗は、複数のリンス槽を直列につなぎ、最後の槽に導入した新しい水を前段へと順に流していく方式です。
この仕組みにより、部品は工程の終わりに最も清浄な水で洗浄されます。結果として、従来の単一リンスや連続散水と比べても、同等の洗浄品質を保ちながら水の使用量と排水量を大幅に削減できます。
さらに、薬品の持ち出し(ドラッグアウト)も抑えられるため、工程の安定やコスト削減に寄与します。
※ドラッグアウト:めっき処理後、部品に付着しためっき液を回収する作業のこと。

めっき工程フローと向流多段水洗の例(アルカリ洗浄→リンス→酸洗浄→Niめっき→向流多段水洗)

図:めっき工程の代表例。アルカリ洗浄→酸洗浄→めっき→向流多段水洗→回収/処理の流れ。

導電率(EC)モニタリングが必要な理由

向流多段水洗を安定運用するには、導電率(EC)の常時監視が有効です。導電率は水中のイオン濃度の指標で、給水(RO/DIなど低EC)から各リンス槽(高EC化しやすい)までの水質状態を定量的に把握できます。

  • 清浄度の見える化:槽ごとのEC差で、洗浄段取りや補給水の適正を評価。
  • ドラッグアウト対策:EC上昇で薬品持ち出しを早期検知し、回収・補正を迅速化。
  • 排水負荷の抑制:放流前の水質変動を把握し、処理設備の負荷を平準化。

アルカリ洗浄とpH管理のポイント

めっき前処理のアルカリ洗浄酸洗浄では、残留薬品が後工程や設備に影響します。

  • pH管理:アルカリ洗浄後の中和や酸洗浄後のリンスでは、pHの逸脱が洗浄効率や腐食・スケールに影響。適切なpH範囲を連続モニタリングし、異常時は早期修正。
  • EC×pHの組み合わせ:ECで汚染度、pHで中和・残留状況を把握し、補給水・薬注・回収の最適化につなげる。

現場での運用ヒント

課題 対応のヒント
槽ごとの水質ばらつき 各段のECを常時モニタリングし、補給水量・向流を定期点検。
薬品の持ち出し(ドラッグアウト) 前段ECの上昇を検知・管理し、回収・補正・補給の自動化で迅速対応。
前処理後の残留アルカリ/酸 中和・リンス段でpH連続モニタリング。逸脱時は警報と自動制御で修正。
記録 ロギング(時系列データ)で保全・改善・監査対応に活用。

製品導入例:HI 520(EC・pHの連続モニタリング/制御)

向流多段水洗の水質管理には、ECとpHの常時監視+アラーム・制御が有効です。

HI520 多項目測定・制御装置(EC・pH対応)

  • 多項目対応:EC・pH(ほかORP/DO/濁度/温度を必要に応じて拡張可)。
  • 連続モニタリング:清浄側~汚染側までレンジ差の大きいECを常時計測。
  • アラーム/自動制御:閾値逸脱で警報・薬注・補給水の自動化に連携。
  • データロギング:日次・週次のデータ把握で改善・保全・監査に活用。

⇒ 製品詳細:HI 520(製品ページ)

まとめ(要点)

項目 内容
向流多段水洗 最終段に新水を供給し前段へ向流。洗浄品質を維持しつつ水使用・排水を抑制。
ECモニタリング 槽ごとの汚染度・清浄度を定量把握。ドラッグアウト対策と放流水の安定化に寄与。
pH管理 アルカリ洗浄・酸洗浄後の中和や設備保護に必須。逸脱は早期修正。
法令対応 水質汚濁防止法の排水基準を遵守。最新情報は環境省の公的資料を参照。
機器例 HI 520:EC・pHの連続モニタリングとアラーム/制御、ロギングで現場運用を支援。

参考資料(公的情報)

※工場排水は水質汚濁防止法に基づく排水基準の対象です。業種・地域により追加基準が課される場合があり、最新の情報をご確認ください。

※本記事はHanna Instruments アメリカ本社による記事を翻訳・編集しています。(No.05-001-04-001)

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