秋祭り・学園祭の食中毒対策|中心温度の測り方と記録ポイント
秋祭り、学園祭、スポーツ大会、地域イベント。屋外で食べるごはんがおいしい季節ですが、調理する側にとっては「夏が終わったから大丈夫」とは言えません。大切なのは、熱そう・冷たそうという感覚ではなく、加熱、冷却、保管の温度を実際に測り、必要な記録を残すことです。
加熱したときは十分熱かった。保冷剤も入れた。でも、容器の中央まで冷えていたか、日なたの販売台で何度になったかは分からない――。イベント販売では、普段の厨房より工程が長く、搬送や待機も加わります。事故を防ぐには、調理場だけでなく「作ってから食べるまで」を一本の流れとして見る必要があります。
2026年9月公表の食中毒事例から考える、催事の管理点
東京都は2026年9月3日、港区内のイベントで販売された「冷やし蟹ラーメン」を原因食品とする、サルモネラ属菌による食中毒の発生を公表しました。ただし、公表資料から温度管理の不備や汚染経路が特定されたとは読めません。当該事例を「中心温度を測れば防げた」と結びつけることはできず、ここから先は催事全般で見直したい一般的な予防策として説明します。
厚生労働省は、細菌性食中毒を防ぐ基本を、菌を「つけない・増やさない・やっつける」の3原則で示しています。ウイルスは食品中で増殖しないなど、原因によって対策は異なります。初秋はまだ気温の高い日があり、調理後から提供までの時間が長くなるテイクアウトやイベント販売では、特に時間・温度管理を計画に組み込むことが大切です。
「中心温度」と「保管温度」は、別の確認
中心温度は、加熱した食品の最も火が通りにくい部分が、定めた加熱条件を満たしているか確認するために測定します。一方、保管温度は、調理後の商品が提供まで適切な温度帯で保たれているかを見るものです。同じ温度計を使う場合でも、測る目的と場所は違います。
| 確認する場面 | 測る場所 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 加熱 | 最も厚い部分、火が通りにくい部分 | 表面温度だけ、鉄板や油の温度だけで判断する |
| 冷却 | 容器中央や冷えにくい部分 | 冷蔵庫へ入れた時刻だけ記録し、食品温度を測らない |
| 保管・搬送 | 保管庫・クーラーボックス内の温度と、必要に応じて代表食品の温度 | クーラーボックスの表示温度と食品温度を同じと考える |
| 再加熱 | 再び中心部 | 湯気が出た、触って熱いという感覚だけで終える |
厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは、加熱調理食品について中心部を75℃で1分間以上、またはこれと同等以上まで加熱することが示されています。なお、二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品については、85~90℃で90秒間以上とされています。
ただし、これらはあらゆる食品・催事に一律適用する数字ではありません。自治体・業界の手引きや自社のHACCPに沿った衛生管理計画を優先します。数字だけを切り取らず、「何を、どこで、何回測り、外れたらどうするか」まで手順に落とし込みます。
正しく測るには「刺す場所」と「待つ時間」が大事
唐揚げやハンバーグなら、厚みのある部分へセンサー先端を差し込みます。鍋料理なら、よくかき混ぜたうえで、鍋肌や底に先端が触れない位置で測ります。複数個を一度に作る場合は、火力が弱い位置や大きめの食品など、最も熱が通りにくいと考えられるものを選びます。
薄い食品では横方向からセンサーを差し込むなど、センサーの感温部が測定したい食品の中心部に正しく位置するよう工夫します。表示が上がり始めたところですぐ抜かず、値が安定するのを待ちます。温度計の応答時間やセンサー形状によって、測定に必要な時間は変わります。
油の設定温度が高くても、冷たい食材を大量投入すれば油温は下がり、食品中心の上がり方も変わります。衣の色や調理時間だけではなく、衛生管理計画で定めた頻度・ロットの代表品を測ると、機器の癖や一度に入れられる量が見えてきます。
測定の前後に、二次汚染を起こさない
温度計を使うこと自体が汚染のきっかけになっては本末転倒です。生肉を測ったセンサーで、そのまま加熱済み食品を測らないこと。使用前後に、施設の手順に沿って洗浄・消毒し、清潔な状態で保管します。
また、容器のふたを何度も開けたり、一つの商品に何度も刺したりすれば、衛生面や商品品質に影響します。必要に応じて測定専用品や代表品を用意し、どのロットを何個測るか、誰が測るか、基準を外れたとき何をするかまで事前に決めておくと、忙しい販売中でも手順がぶれません。
記録は「数字を埋める作業」にしない
記録表には、温度だけでなく、食品名、ロット、測定時刻、測定者、判定、外れた場合の対応を残します。同じ料理でも、仕込み量、食材の初期温度、加熱機器、屋外気温が違えば結果は変わります。異常があったときに工程をたどれる記録が役立ちます。
- 温度計の表示に異常がないか、使用前に確認する
- 測定位置と安定待ち時間を担当者間でそろえる
- 食品ごとの管理基準を記録表に印刷しておく
- 基準外なら誰へ報告し、どう扱うか決めておく
- 催事終了後に、保管時間や廃棄量も振り返る
温度計そのものの確認も忘れずに
温度計は、落下、衝撃、センサーの曲がり、ケーブル損傷などで状態が変わることがあります。表示や外観の日常点検、基準器との比較、外部校正はそれぞれ役割が異なります。必要な精度や監査条件に応じて、校正やトレーサビリティに関する書類の必要性を検討し、「去年使えたから今年も大丈夫」で終わらせない仕組みをつくります。
温度を測れば、食中毒菌がいないと証明できる?
中心温度の記録は、定めた加熱工程を実施した証拠の一つです。病原体の有無を確認するには微生物検査、アレルゲンは専用検査、原因究明は保健所や専門検査機関による調査が必要です。
pHも、酢飯や発酵食品などでは工程管理の指標になりますが、すべての料理の安全を保証する万能値ではありません。検証されたレシピと衛生管理計画に基づき、温度・時間・交差汚染防止と組み合わせます。
イベント前の数日だけ、測定体制を増やす
短期イベント、試作、繁忙期だけ測定を増やしたい場合は、レンタルも選択肢です。突き刺し型温度計HI 98501は、固定式プローブで液体や食品の温度を手軽に確認したい場面に向きます。
HI 93501は、1 mケーブル付きの突き刺し型温度センサーを使用するポータブル温度計で、校正書類が必要な運用についてもご相談いただけます。
| 機種 | 向いている使い方 | 選定時の確認 |
|---|---|---|
| HI 98501 | 催事でのシンプルな突き刺し測定 | 固定式プローブの長さ・測定範囲 |
| HI 93501 | ケーブル付きセンサーで食品温度を測定 | センサー仕様、必要書類、運用環境 |
相談時には、食品の種類、温度範囲、測定本数、使用場所、防水性、記録・校正書類の要否をお伝えいただくと選定がスムーズです。
温度テスター HI 98501
固定式の突き刺し型プローブを備え、食品や液体の温度を手軽に測定できます。催事や日常の食品温度チェックにも使用できます。
ポータブル温度計 HI 93501
1 mケーブル付きの突き刺し型温度センサーを使用し、食品温度の測定に対応します。校正書類が必要な運用についてもご相談いただけます。
まとめ:温度は「測って終わり」ではなく、記録と対応まで
イベントや催事での食品衛生管理では、見た目や触った感覚だけでなく、食品の中心温度や保管状態を実際に確認することが大切です。
また、温度を測るだけではなく、測定位置、時刻、判定、基準を外れた場合の対応まで記録しておくことで、工程の振り返りや改善につなげやすくなります。
一方、温度計だけで食中毒菌やウイルスの有無を確認することはできません。温度管理は衛生管理の一つとして、手洗い、交差汚染防止、適切な保管、HACCPに沿った管理などと組み合わせることが重要です。
測定したい食品、温度範囲、使用場所、必要な校正書類などをお知らせください。用途に合った温度計や測定方法をご案内します。
参考情報
・厚生労働省「食中毒」
・厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」
・厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」
※本記事は一般的な食品衛生・温度管理の考え方を紹介するものです。食品・施設ごとの衛生管理計画、自治体や所管保健所の指導を優先してください。製品仕様・レンタル条件は各ページで最新情報をご確認ください。