植物がよく育つ土壌pH管理とは?
最適なpHと測定のコツ
植物がよく育つ環境づくりにはpH管理が欠かせません。水耕・土耕どちらでも活かせる基本知識と海外事例をご紹介します。
pHが植物に与える影響とは?
栄養素の吸収はpHで決まる
植物が必要とする栄養素の吸収効率は、pHの値に大きく左右されます。pHが4.0〜5.0の強酸性では有害なミネラルが溶け出しやすく、pH8.0を超えると栄養素の溶解度が下がります。適切なpHを保つことで、肥料の効果を最大限に引き出すことが可能です。
土壌のpHは何で決まるのか?

土壌のpHは、地質や気候、施肥の履歴、分解された有機物の量など、さまざまな環境要因によって決まります。
たとえば、石灰岩が多く分布する地域では、炭酸塩や可溶性塩が土壌に多く含まれ、アルカリ性になりやすい傾向があります。
一方で、酸性雨や肥料、有機物の分解が進んだ環境では、水素イオンやアルミニウムイオンが増え、土壌が酸性に傾くことがあります。
自然界の土壌pHは、おおむね pH4.0〜8.0の範囲に分布しており、地域差や農地の履歴によっても変化します。
pHが栄養素の“効き方”を左右する
植物の生育に欠かせない主要な栄養素(N・P・Kなどの三大要素)や微量要素(Fe・Mn・Znなど)の吸収効率は、土壌pHの値によって大きく左右されます。
- pH4.0〜5.0の強酸性土壌では、鉄・アルミニウム・マンガンなどの濃度が上がり、毒性が出やすくなる
- pH8.0〜9.0の強アルカリ性土壌では、リンや鉄などが不溶化し、吸収されにくくなる
このように、適正なpHは「吸える養分の量」をコントロールする鍵になります。

窒素固定菌もpHに敏感
根に共生する窒素固定菌(主にマメ科植物)は、大気中の窒素(N₂)を植物が吸収できる形(アンモニウム:NH₄⁺)に変える重要な働きを担っています。
これらの菌はpH6.0〜8.0の範囲で最も活発に活動するため、適切なpHは自然な窒素供給の助けにもなります。
作物別に異なる「最適pH」
多くの植物はpH6.0〜6.8のやや酸性で最もよく育ちますが、作物によって最適値は異なります。また、pHが適正であれば、根に共生する窒素固定菌の活動も活発になり、植物の自然な栄養吸収を助けます。
作物別:最適pHと向いている土壌の例
土壌タイプ | 代表的な作物 | 最適pH目安 |
---|---|---|
酸性寄り(pH5.0〜6.0) | ブルーベリー、じゃがいも、さつまいも、茶 | 5.0〜5.5 |
中性寄り(pH6.0〜7.0) | トマト、きゅうり、いちご、なす、小松菜 | 6.0〜6.8 |
アルカリ性寄り(pH7.0〜7.5) | キャベツ、カリフラワー、大麦、ほうれん草 | 6.8〜7.5 |
※作物の種類や品種によって適正pHは多少異なる場合があります。詳しくは地域の土壌診断や栽培ガイドをご確認ください。
アメリカ温室農家の導入事例
シンプルな管理で育成の安定化
アメリカの苗木生産者は、点滴灌漑による養液管理において、pHとEC(導電率)を定期的に測定。1本の電極で簡単に測れる多機能測定器が導入され、作業の効率化と正確な管理に貢献しています。
【実例】HI 9814Dで簡単・正確に測る
実際にアメリカのある苗木生産者では、点滴灌漑水による養液供給において、pHとECの測定にHI 9814Dを導入。さらに土壌スラリーを作成し、定期的に土壌のpHとECもチェックしています。

HI 9814D使用イメージ|pH・EC・温度を同時表示
このモデルは1本の電極でpH・EC・℃をまとめて測定できる多機能計。自動で2点校正に対応しており、pHとEC、温度が同時に表示されるため現場作業でも使いやすいと高く評価されています。
校正とメンテナンスで「信頼できる測定」
HI 9814Dは校正後12時間はpH電極の状態を画面左側に表示。本来目に見えないpH電極の状態を
把握しメンテナンスや交換時期を適切に判断できます。
- 専用の「pH/EC簡易標準液(HI 50036P)」でpH(6.86pH)とEC(5.00mS/cm)の校正が同時に行えます
- 電極はノイズ誤差を防ぐ増幅器を内蔵
- 別売りの土壌ダイレクトpH電極(HI 12943)を使用すれば土壌や固形培地に直接
突き挿してpHと温度を測定 - 電極洗浄液で土壌や養液などの汚れを除去、電極保存液でpH電極を保護
見やすく、壊れにくく、使いやすい
さらに、HI 9814Dには視認性に優れたディスプレイや、耐衝撃性を高めるラバーブーツ(HI 710030:グリーン)も装着可能。持ち運びや現場作業でも安心して使えます。※ラバーブーツは別売りです。
「測定器は便利だけどその数値を信用するために、定期的に状態をチェックする」——この意識が、安定した栽培と品質管理につながります。
まとめ
水耕栽培においても、pH管理は収量・品質を左右する重要な要素です。日々の管理の中にpH測定を取り入れることで、安定した栽培環境を築く一歩になります。
ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社
※作物ごとの最適pHは、農研機構や各地の農業普及センターなどの情報を参考にしています。
参照:農研機構(NARO)|農林水産省