残留塩素とは

残留塩素とは 残留塩素
水質測定器メーカー ハンナ インスツルメンツ・ジャパン
残留塩素は飲料水からビル管理、透析液とあらゆる産業で私たちの安全衛生を担保するために活用されています。国や地域自治体は残留塩素濃度を規定し、人体への安全に配慮しています。
世界46か国で展開する水質測定器の専門メーカー
ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社

1.残留塩素とは

 水道水を安全に飲めるのは、殺菌消毒がされているためです。消毒に使われるのが塩素で、水の中に含まれる塩素を残留塩素と呼びます。

2.残留塩素の種類

 残留塩素は遊離残留塩素と結合残留塩素のふたつに分類されます。

2-1.遊離残留塩素(HClO)

 一般的には遊離塩素と呼称されており殺菌力の強さが特徴のです。次亜塩素酸水と呼ばれる消毒液の正体はこの遊離塩素が溶け込んだもので、水に溶かすと以下のように化合して水の中に存在します。

H2O + Cl2HCl + HClO
 + 塩素 → 塩化水素 + 遊離残留塩素

 遊離塩素は水のpHが弱酸性から弱アルカリ性付近の際に消毒力と持続力を発揮します。そのために水道水のpHは調整されており、海水などpHが高い水とは相性が悪く消毒力が持続しません。

遊離塩素とpHの関係を詳しく知りたい方はこちら

2-2.結合残留塩素

 遊離塩素よりも消毒力に劣りますが、刺激が弱いため入浴施設の消毒やぬめり取りなどの分野で注目されています。遊離塩素がアンモニアと結合したもので、以下のように反応します。

HClO + NH3H2O + NH2Cl
遊離残留塩素 + アンモニア →  + モノクロラミン
NH2Cl + HClOH2O + NHCl2
モノクロラミン + 遊離残留塩素 →  + ジクロラミン
NHCl2 + HClOH2O + NCl3
ジクロラミン + 遊離残留塩素 →  + トリクロラミン

 消毒に使用されるのはモノクロラミンで、ジクロラミンとトリクロラミンは塩素の臭いが強く消毒力も大幅に減少します。水泳施設などで脱衣所からプールに向かう間に感じる独特の臭い、あれは塩素と人の汗(アンモニア)が化合して発生したジクロラミン/トリクロラミンによるものです。

3.水道水の塩素と基準値

 塩素の使用目的は殺菌消毒にあります。水道水も塩素消毒されていますが、飲んでも人体に影響が出ないように濃度の基準が定められています。水道法では「給水栓における水(蛇口から出てくる水)が、遊離残留塩素を0.1mg/L(結合残留塩素の場合は0.4mg/L)以上保持するように塩素消毒をすること」と定義されています。上限は目標値として1mg/L以下とされています。

 塩素濃度をどれくらいにするか、実際には地方自治体によって決められています。東京都水道局は「おいしさに関する水質目標」を独自に定め、残留塩素濃度を必要最低限の0.1mg/L以上0.4mg/L以下としています。0.4mg/Lを超えるとカルキ臭が強くなり風味への影響が出るためです。

 人体への影響については、WHO世界保健機関の塩素濃度ガイドラインで、「5mg/L」以下と定義されています。この値は日本人からすると高く感じるのは自然なことで、そのため厚生労働省や自治体は衛生と人体両方の安全を担保した数値を規定しています。

4.感染症対策

・レジオネラ症
 レジオネラ症の原因となるレジオネラ菌を殺菌するべく、厚生労働省は「浴槽水中の遊離残留塩素濃度を1日2時間以上0.2~0.4mg/L(ppm)に保つことが望ましい」と定義しています。https://www.mhlw.go.jp/topics/2001/0109/tp0911-1.html

※レジオネラ症予防についての記事はこちら

・食中毒
 ノロウイルスは食中毒の原因の50%以上を占めているというデータもあります。厚生労働省は調理器具を洗浄後は200ppmの次亜塩素酸ナトリウム(塩素)で浸すことを推奨しています。これは腸管出血性大腸菌O-157対策でも同様です。https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/140304-s.pdf

5.残留塩素とトリハロメタンについて

 トリハロメタンは、水道水を消毒する際、水中の有機物(汚れやバクテリアなど)と塩素が反応して生成されるものです。そのため「消毒副生成物」とも呼ばれます。
水道水を塩素で消毒すると副生物が発生する
 なぜトリハロメタンが注目されるのでしょうか?

 厚生労働省に定められているトリハロメタンは以下の4つであり、これらを合算したものを総トリハロメタンと呼びます。

・クロロホルム
・ブロモジクロロメタン
・ジブロモクロロメタン
・ブロモホルム

WHOではクロロホルムとブロモジクロロメタンを「発がん性が疑われる」化学物質(グループ2B)に分類されています。
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/iarc.html

 このような評価が、水道水の安全性に関する疑念を生む要因となりました。
 厚生労働省は水道水の安全を担保すべく「水質基準項目」を設定しており、基準値は以下の通りです。

項目 基準
総トリハロメタン 0.1mg/L以下
クロロホルム 0.06mg/L以下
ブロモジクロロメタン 0.03mg/L以下
ジブロモクロロメタン 0.1mg/L以下
ブロモホルム 0.09mg/L以下

6.残留塩素の測定方法

 N,N-ジエチルパラフェニレンジアミンが塩素と化合してピンク色に発色するDPD法を用いた計測が一般的で、これは「水道法施行規則第17条第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める遊離残留塩素および結合残留塩素の検査方法」に準拠しています。

 ハンナのDPD試薬(N,N-ジエチル-1,4-フェニレンジアミン硫酸塩)と残留塩素の化学反応は以下のように表現できます。

C10H18N2・SO4 + Cl2 + 4H2OC10H20N2Cl2・SO4 + 4HCl
DPD試薬 + 塩素 +  → DPD錯体 + 塩化水素

 塩素濃度は発色した検体(測定サンプル)を色見本と合わせて目視判断するか、吸光光度計で色の透過率から塩素濃度を算出する方法があります。ハンナでは吸光光度計を用いたデジタル残留塩素測定器を提供しています。デジタル残留塩素チェッカーHI 701と、校正機能を搭載したポータブル残留塩素計HI 97701はこちら。

水質測定器メーカー ハンナ インスツルメンツ・ジャパン

残留塩素の基本から事例までをまとめた入門書となります。
・残留塩素とは
・塩素の特性
・感染症対策
・測定方法
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