pHとORPと塩素の関係。消毒効果の持続力に影響

pH

 塩素は水遊びや入浴に際し、病気や感染症を防ぎ安全衛生を保証するために使用されるため、みなさまにとっても馴染み深いものではないでしょうか。行政の規則で水に含まれる残留塩素濃度は目にされると思いますが、その塩素がどれだけ消毒効果を持っているのか? 直接判断するにはもう少しパラメーターが必要で、それこそがpHでありORP酸化還元電位です。この記事では塩素が効いてるかどうか、しっかりと確認したい方に向けて塩素のメカニズムを紹介致します。

水質測定器メーカー ハンナ インスツルメンツ・ジャパン
添加した塩素が機能する環境かどうかはpH、機能しているかを示すのがORP(酸化還元電位)です。
世界46か国で展開する水質測定器の専門メーカー
ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社

塩素とは

 塩素には遊離塩素と結合塩素(クロラミン)が存在します。世の中の”塩素”として定着しているのが遊離塩素で、殺菌力の高さが特徴です。また肌刺激が強く水分中の濃度に注意する必要があるため行政各所では残留塩素濃度を規定し、安全な水環境の配備に考慮しています。

 結合塩素は遊離塩素よりも殺菌力は劣るものの、肌刺激が少なく、ぬめり取りにも適しています。ジワジワと効いてくるイメージなので、入浴施設での利用が注目されています。

 さて塩素剤を水に溶かすと、塩素は水と化合して次亜塩素酸もしくは次亜塩素酸イオンへと変化します。例えば入浴場ですと人の汗は当然のこと、尿などのアンモニア性物質が含まれることがあります。塩素は有機物やアンモニアと化合し無害化する性質があるため、消毒剤として使用されています。
 
 ちなみに次亜塩素酸イオンの消毒力は次亜塩素酸の1/100と言われており、塩素を次亜塩素酸にするためには水のpHに気を配る必要があります。

pHとは

 pHは水や物質に含まれる水素イオン濃度を表します。pH0~7を酸性、pH7~14をアルカリ性、pH7が中性です。

 ではpHが実際にどのような役割を果たすのでしょうか?
 
 洗剤に着目してみましょう。酸性洗剤は、ぬめりや垢など、こびりつきの強い物を落とすために使用します。お風呂の水垢はアルカリ性なので酸性洗剤を使って中和させ汚れを落とします。逆にアルカリ洗剤は油汚れを落とすのに有効です。もうお分かりだと思いますが、油汚れが酸性なのでアルカリ性の洗剤を使って中和させています。

 このように酸性アルカリ性のどちらが良い悪いではなく、役割があり相性があります。ちなみに人間の肌は弱酸性と言われていますから、酸性度もしくはアルカリ度の高い洗剤や養液が付着すると皮膚かぶれを起こす場合があります。カビ落としなどする際にゴム手袋をしているのはそのためです。

ORPとは

 塩素を普段お使いの方にとっては初めて見るキーワードかもしれません。水と塩素の化合を詳細に見ると、水分子が持つ電子エネルギーは塩素分子に享受されます。電子エネルギーを放出することを酸化反応と呼び、享受することを還元反応と呼びます。この酸化と還元がどれだけ活発に行われているかがORP(酸化還元電位)であり、塩素が水と化合しているかを見る指標となります。
 

pHと残留塩素の関係

 塩素が水と化合し次亜塩素酸もしくは次亜塩素酸イオンになる過程を化学式で見てみましょう。

 塩素Cl2が水H2Oに投入されるとClが酸素イオンと結合しHOCl(次亜塩素酸)になります。すると水素イオンHが分離して残りのClと結合しHCl(塩酸)になります。

 どちらに化合するかは水のpHに依存し、pH7までは塩素のほとんどが次亜塩素酸に、pH7以降は次亜塩素酸イオンOCl-となります。もしもpHが7以上の水に塩素を添加しても、塩素濃度は高いが消毒力を持たない状況が発生しかねません。規則を満足するには塩素を添加すれば良いかもしれませんが、消毒効果が担保される環境かどうかはpHの確認も必要になります。

 また水のpHがアルカリ寄りになると、遊離塩素分子の不安定さが増すため水と化合しやすくなります。そのため塩素が消化される時間が早まるため、消毒効果を維持できる時間が短くなります。

pHと次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンの関係

残留塩素とpHとORPの関係

 塩素が維持される環境はpHに依存することが分かりました。では塩素が効いているかを確認するには、ORPを知る必要があります。pH、ORP、残留塩素はそれぞれ相関性があり、pHとORPが分かれば以下の理論値表から塩素濃度を算出できます。例えば日本のプールや浴槽で塩素を使用されると仮定すれば、pHが7以下の状態でORPが750~800mVの範囲にあれば、消毒効果を持った塩素が水の中にあると言えます。

pHとORPと塩素の関係

 なお市販の塩素を投与する際は水にゆっくりと混ぜてください。塩素が強アルカリ性のため水のpHがアルカリに振れやすくなります。
 

検証してみた

 ハンナのビルで使用されている水道水をpH5.80とpH7.41に調整し、塩素を添加して攪拌しながらpH、ORP、塩素の変化を計測してみました。塩濃度の測定は0分、30分、60分の3回。
pH5.80の水に塩素を添加した場合

pH7.41の水に塩素を添加した場合
 結果は、時間が経過しても塩素濃度とORPは大きく低下しませんでした。塩素と消毒効果の両方が維持されています。

 
 
 加えてpH5.01とpH8.61で同じ検証をしたところ、塩素とORPの減少が顕著でした。このことから水のpHが塩素の消毒力に影響を与えていることが分かります。
pH5.01の水に塩素を添加した場合

pH8.61の水に塩素を添加した場合

 今回は水道水で検証しましたが、人間が水に浸かることを考えれば汗や汚れが水中に溶け込みやすくなるため、実験値よりも消毒力の低下が早まると予測されます。定期的に計測することで安全な環境の維持に努めましょう。

ハンナのデジタル測定器

 ハンナではpH,ORP,塩素をデジタルで計測できる測定器をご用意しております。

残留塩素チェッカー

 採取した水に粉試薬を入れ、ボタンを押せば数字で塩素濃度が算出されます。試薬が塩素と反応し発色します。この色を比色測定できるのがハンナのデジタル残留塩素チェッカーです。


pHテスター

 ハンナで最も低コストなpHテスターは、ボタンを押せばすぐに測定が可能です。

ORPテスター

 ORPのみ、もしくはpHとORPの両方を一台で計測できる測定器をご用意。ORPテスターは保管も簡単で初心者にもおすすめです。

水質測定器メーカー ハンナ インスツルメンツ・ジャパン

残留塩素の基本から事例までをまとめた入門書となります。
・残留塩素とは
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ご興味のある方はお気軽にダウンロードください。
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