【千葉市】3年目のいちご栽培。さんたファームさんが感じる記録の大切さ「pHとECが障害解決の糸口に」

お知らせ

ハンナの製品を利用いただいているお客様を紹介するこの企画、今回は千葉県千葉市内の苺農家様をご紹介致します。


l完全予約制のいちご狩り農園

千葉市の御殿町にある完全予約制のいちご狩り農園ですが、直売所も併設しており平日でも多くのお客様で賑わっています。農園の入り口からは南国をイメージさせる装飾で園内には広いカフェスペースも設置され、まるで旅行気分にさせてくれるおもてなしです。

何より、園内全体が綺麗に整備されており、苺はもちろん利用するお客様に楽しんでもらうという想いを感じます。


lそれが「さんたファーム」さんです!

篠崎俊介さまが代表を務めるさんたファームは2019年4月にオープンしました。ハウス内では12,000株のいちごが栽培されており、コロナ禍の昨今においても多い時には週末に200組以上のお客様が訪れる人気のいちご農園です。

さんたファームの代表、篠崎俊介さま

今回訪問させていただきましたが、いちごの大きさや形、色づきが整っておりバラつきが少ないという印象を受けました。そして、その秘密は丁寧な手入れにあります。


l丁寧な手入れとは?

摘花(てきか)です。摘花とは小さな実や花を取り大きな実に栄養を集約する作業のことです。摘花は収量が減ってしまう可能性もあり、また非常に大変な作業ですが、さんたファームでは毎週全ての花の大きさや形をチェックして摘花を行うことで、お客様に大きくて美味しいいちごをご提供しています。


l篠崎さんのこだわり

丁寧な手入れや農園の管理からも篠崎さんの想いは強く感じられますが、いちご栽培において篠崎さんが摘花と同じくらい重視されているのがデータの活用です。ハウス内の温度、湿度、日射量、養分、水分などをコンピュータ制御する統合環境制御技術を活用されており、理論と実数を融合したデータ農業が特徴的です。(さんたファームさんのホームページでも特徴として書かれています

ハンナでもpH計やEC計、成分分析器をご利用いただいており、今回は篠崎さんが美味しいいちごを提供するためのプロセスや苦悩、障害が起きた時のデータ活用などを伺いました。

l農業を始めて思うこと。データがノウハウ習得のスピードを引き上げる


─ 養液土耕栽培を選択された経緯を教えてください。
篠崎さん:土壌の緩衝能が決め手でした。ロックウールや水耕、土耕だと小さなトラブルで影響が出てしまい、現場だと精密な運用が難しいので余裕を持たせるために選びました。


─ 毎年がトライ&エラーの繰り返しなのでしょうか?
篠崎さん:一作が1年半ですが、もう毎年です。一作の中でのトライ&エラーもありますが、例えば育苗の失敗が一作全体に影響が及ぶこともあります。(出来が)100点満点なんて無いので、基本的に何らかの失敗を常に抱えてどう改善するか?をずっと考えています。


─ 例えば、昨年と今年で変えたことはありますか?
篠崎さん:肥料を変えました。そもそもハンナさんとの出会いは肥料を詳細に分析して100点に近づけたいという考えからです。最初はpH・EC計を使用していましたが、肥料の分析をする中でいろんな成分を見たくなり、気が付いたらiris(アイリス)*を買っていました(笑)
*編注:窒素、リン酸、カリウムのほか、微量成分なども分析可能な分光光度計


─ 研究室と違って現場では色んな変数が入ってきますよね?
篠崎さん:毎日廃液のpHやECを測定していて、毎日測定しないと分からないことがたくさんありました。品種ごとに肥料の推移、pHの変動も全然違うので、品種ごとにpH・ECを調節できるような仕組み作りにも挑戦しています。
 
昨年から、問題が起きた時に分析を深めていく中で品種ごとに生育などの違いが分かってきました。生育の差を制御に活かしていくために、今は統合環境制御板を作りました。センサー類をシステムの中で読み取り、計測値に基づいてpHやECを品種ごとに制御して肥料成分を変える挑戦をしています。
 
本当に試行錯誤の毎日で、40歳ぐらいから新規就農したら20~30年で卒業する計算なので(トライアンドエラーできる)回数が少ないです。すぐに事業として安定させないといけないので本当に時間がなく、ノウハウ習得のスピードアップのためにもデータ分析を活用していきたいと思っています。


lpH・ECがトラブル解決の糸口に


─ 数あるpH・EC測定器の中でソイルテストブラザーズ*を選んだきっかけを教えてください。
*編注:土壌に直接突き刺せるpH計とEC計のコンビ名。養液測定にも対応。

篠崎さん:信頼性と運用実績はありそうと感じました。ブログなどでも情報発信されていて、農業分野に注力している印象でした。購入後のサポートも手厚いし現場寄りな安心感があります。(ハンナの本社が)近くというところも。

─ データに基づいた農業のメリットを篠崎様から学び、発信していくことがハンナとしての使命でもあると思っています。どのように使用されていますか?
篠崎さん:測定器を使って収量がアップしました!などすごく華やかな話をできればいいのですが、実際使ってみて思うのは、トラブルを減らすこと、何でトラブルが起きているのか? その理由を突き詰めるために使用しています。ポジティブな話しというよりは、どちらかと言うとネガティブな要素を潰すことに重きを置いています。


─ pH・ECが基本ですかね?
篠崎さん:pH・ECが基本で重要になると思います。たとえば生理障害をひも解くとpHの影響を受けていました。pHとECを見るといろいろと発見があるのではないかと思います。


─ 数値が見えることで問題解決の糸口が見えるかもしれない。まずは簡易的でいいからpH・ECを見た方が良い、ということですかね?
篠崎さん:簡易的なものでもいいと思うんです。何かおかしいなって思った時にデータを取ることで解決の糸口が見えると思います。

今年もトラブルでいえばいろいろありますが、その原因はほぼ分かっているので対策はこうしようっていうのが明確に、推定ではなく確証で感じられています。それもデータを取ることで選択肢が絞れてきました。


lトラブルの原因を1つでも絞れたら・・・


─ 自分の中で試行錯誤を続ければ、少しずつ指標が見えて100点に近づいていくんですね。
篠崎さん:毎年ちょっとずつ点数が上がっていけばいいと思うんです。農業も本当に終わりがないというか、恐ろしいことに手を出しちゃったなと(笑)


─ 少し話題を変えて、これからのハンナに期待することはありますか?
篠崎さん:pHやECメーターはいいなと思いました。pHメーターはどうしてもガラス電極の取扱いに気を遣わないといけないですが、ECメーターは多少扱いが粗くなっても平気でいいなと。やはり農業資材の1つですので、現場でササっと使える物がいいですね。現場では異常値を検出できれば良いので、そういう意味では測定器や試薬の扱いやすさが結構重要です。そういう部分ではさらなる期待をしています(笑)

農業をしているとトラブルが発生して、その原因がよくわからないというモヤモヤとずっと共存するんです。それがある程度絞れて原因の候補が10コあったのが3コに絞れるだけでも気持ちが全然違う。恐ろしいことに10コぐらいは平気であるんですよね。


─ ハンナとしては、そういったトラブルを1つでも解消できる存在としてあり続けたいなと思いますが、印象はいかがですか?
篠崎さん:価格帯や使い勝手の良さを感じました。結構ユーザーの声を聞いているように感じますし、農業寄りだなと思います。


l美味しいには理由があった

今回、篠崎さんにいちご栽培や農業に対する想いや考えを伺え、とても貴重な体験をさせていただきました。
12,000株におよぶ苺が規則的に実っている様子から、手間と時間をかけ大切に栽培していることは想像できました。ですが、実作業と意識を配る量の膨大さには、「尊敬」という言葉に尽きます。

帰り際に直売所で苺を買おうとしたら売り切れという案内に、残念ではありつつ「やはり」と納得できました。
さんたファームさん、篠崎さま、誠にありがとうございました!


lさんたファームさんのご紹介

2022年5月現在、今シーズンの営業は終了とのことで、来シーズンが待ち遠しいですね。
ホームページでは、さんたファームさんのこだわりや、いちご狩りの予約が行えます。TwitterやInstagramもチェックしてみてください!
ご興味ございましたら、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
さんたファームさんのホームページ