【事例】水耕栽培養液の溶存酸素測定

アプリケーションノート

HI 2004-01
edge®DO計

edge®DO計を用いた水耕栽培における溶存酸素の計測事例にについて紹介いたします。
※本記事はHanna Instruments アメリカ本社による記事を翻訳・編集しています。

世界46か国で展開する水質測定器の専門メーカー
ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社

解説

 水耕栽培では植物が土のない環境で栽培され、すべての必須栄養素を養液から摂取します。これらの養液は、pH、EC/TDS、特定の養液濃度を注意深く監視しますが見落とされがちなパラメータのひとつが酸素です。
 
 酸素は健全な根の発達に不可欠で、根の好気性呼吸と根域の有益な好気性バクテリアを維持することが目的です。根域の酸素濃度が不足すると根の発育が悪くなり、養分の吸収が制限され望ましくないバクテリアや菌が増加し、これらすべてが植物にストレスを与えることになります。
 
 水耕栽培システムには複数の種類がありますが、最も一般的なのは植物の根を養液に浸す深層水栽培、また植物の根を空気中で成長させ養液を霧状に噴霧するエアロポニックス・システムなどがあります。
 
 養液で湿らせた表面に根の末端を接触させる養液膜法、カカオピート、ロックウール、パーライトなどの不活性培地で植物の根を生育させ、養液をゆっくりと滴下させるドリップまたはパッシブ灌漑システムなどもあります。
 
 根が水中にあるシステムでは養液の通気は根の健全な発達を確保するために不可欠で、溶存酸素濃度(DO)は5mg/L以上が望ましいとされています。

 ただ5 mg/Lを維持するのは温室環境では難しく、水温が上昇すると酸素の溶解度が低下します。温室内の温度が高くなるとDOの溶解度が低くなり、根の呼吸や酸素消費も多くなります。5mg/L以上のDO濃度は曝気によって維持することができます。曝気はエアポンプや酸素拡散器の使用、過酸化水素やオゾンなどの化学物質の添加、あるいは物理的な急速攪拌によって行うことができます。

アプリケーション

 ある農家様が灌漑水中の溶存酸素をモニタリングする方法についてハンナ インスツルメンツにお問い合わせをいただきました。土耕栽培と灌漑水耕栽培の両方を組み合わせており、リザーバータンクのDOと水耕養液のDOを様々なポイントで測定する方法をお求めでした。

 エアポンプとエアストーンを使って灌漑用水のDOを10mg/Lまで過飽和にされておりました。これは養液が添加され養液が温室内に滴下されると、DO濃度が5mg/L以上に維持されるようにするためでした。

 ハンナのHI 2004 edge®DO計は、0.00~45.00mg/Lの溶存酸素を測定できます。直径12mmのポーラログラフィックDO電極により、ユーザーは養液のDO測定をその場で行うことができました。

 DOセンサーの温度成分によりDO測定値の自動温度補正が可能となり、より正確な測定値が得られます。気圧と塩分濃度の両方をメニューに入力するだけで、気圧と塩分濃度の補正も可能になります。

 またDO膜があらかじめ形成されているため、電解液のリフレッシュと膜の交換が非常に簡単であることを高く評価されています。付属の壁掛けホルダーにより、お客様はDO電極を貯水槽に設置し、リアルタイムでDO測定を行うことができました。