アメリカ農業の硝酸塩汚染対策事例|地下水モニタリングで肥料管理を最適化

アメリカ農業の硝酸塩汚染対策事例
地下水中の「硝酸塩汚染」が、今や世界的な課題に。アメリカの農業現場で進められている先進事例をご紹介し、日本の農家の皆様にも取り入れられるヒントを探ります。
なぜいま「硝酸塩」に注目が集まっているのか?
近年、硝酸塩(NO₃⁻)による地下水汚染は、世界中の農業地域で注目されています。日本でも一部地域で飲料水や農業用水に含まれる硝酸塩濃度の上昇が報告されています。
硝酸塩が体内に取り込まれると、特に乳児や若齢家畜への健康リスクが懸念されます。そのため、農家の皆様にとっても「環境に配慮した施肥管理」が重要なテーマとなっています。
アメリカ西部で行われている先進的な取り組み
アメリカ西部の大規模農業地帯では、肥料の使用量が多いため、硝酸塩による地下水汚染が深刻な地域課題となっています。
ある郡(カウンティ)では、地域行政と専門会社が連携し、農家の協力のもと、硝酸塩濃度の定期モニタリングが行われています。
地域内の地質調査と初期水質分析により「リスクの高いエリア」を選定し、近隣井戸で継続的な水質測定が進められています。
得られたデータを活用し、施肥の時期や量の最適化といった農法改善が地域全体で推進されています。
現場で活用されている簡易的なモニタリングの工夫
農家の方々からは「専門機器は高価で扱いが難しい」「外部分析に時間がかかる」といった声が多く聞かれます。
こうした課題の解決に向けて、自分で水質測定ができるハンナ社の硝酸塩用の吸光光度計(下記で紹介)が現場に導入されました。
この機器は、簡単な操作で現場ですぐに硝酸塩濃度を測定できるのが特長で、測定結果に応じた迅速な判断が可能になります。
現場の農家からは、「施肥量を見直すきっかけになった」「地下水汚染のリスクを可視化できた」といった前向きな声も寄せられています。
日本の農家にも応用できるヒント
日本国内でも、地下水位が浅い地域や砂質土壌の多い地域では、硝酸塩の浸出リスクが高まる傾向があります。
肥料の種類・施用時期・施用量の見直しは、環境負荷の軽減だけでなく、肥料コストの削減にもつながります。
また、簡易なモニタリングを取り入れることで、現場の状況を「見える化」し、持続可能な農業への取り組みを一歩進めることができます。
地下水中に含まれる硝酸塩(NO₃⁻)については、日本においても以下のような水質基準が定められています。
- 日本の水道水質基準(厚生労働省)
硝酸態窒素および亜硝酸態窒素の合計として:10 mg/L以下(硝酸態窒素換算)
この基準は、硝酸塩窒素(NO₃⁻-N)と亜硝酸塩窒素(NO₂⁻-N)の合計値を対象としたもので、アメリカの飲料水基準と同等の水準です。
このため、硝酸塩の測定を行う場合には、測定範囲が0.0~30.0 mg/L(NO₃⁻-N)程度ある機器を用いることで、一般的な調査対象範囲を網羅でき、サンプルの希釈を行わずに測定できるケースが多くなります。
HI 97728:現場で使いやすい硝酸塩測定用 吸光光度計
HI 97728 吸光光度計(ポータブルフォトメーター)は、地下水や農業排水に含まれる硝酸塩濃度(硝酸態窒素から変換)を現場で簡単に測定できる携帯型の測定器です。高精度な光学システムと防水設計により、農業現場や屋外環境でも安心してご使用いただけます。
- 測定範囲:0.0~30.0 mg/L(NO₃⁻-N)でサンプルの希釈不要
- 防水構造(IP67準拠)で屋外使用に対応
- ワンタッチでの校正確認「Cal Check™」機能搭載
- 専用ハードケース付きで持ち運びや保管も容易

※複数項目(アンモニア態窒素、カリウム、カルシウム、硝酸態窒素、マグネシウム、硫酸塩、リン酸塩)を一台で測定できるHI 83325(多項目タイプ)もあります。
まとめ
- アメリカ西部では農家と行政が連携し、硝酸塩汚染対策が進められている
- 現場での簡易的なモニタリングが施肥管理の改善に役立っている
- 日本でも「知ること」「小さな実践」から始めることが重要
今後も海外の事例を参考にしつつ、日本の農業現場でもより良い施肥管理と環境保全に向けた取り組みが広がることが期待されます。
ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社