生活排水の再利用に必要なpH・EC測定とは?排水処理現場の水質管理ポイント

アプリケーションノート

生活排水の再利用に必要なpH・EC測定とは?
排水処理現場の水質管理ポイント

生活排水(雑用水)を植栽や散水用水として再利用する動きが広がる中、pHやEC(導電率)の定期的なモニタリングが、排水処理の信頼性を左右する要素となっています。この記事では、排水の水質管理の指標としてのpHとECの重要性と、実際の測定事例をご紹介します。

生活排水(グレイウォーター)とは?

生活排水は、家庭から排出される水のうちトイレを除く部分(キッチン、洗面、シャワー、洗濯など)を指し、海外では「グレイウォーター」と呼ばれています。家庭の排水のうち50〜80%を占めるとされ、再利用が進めば飲料水の使用量を最大50%削減できると報告されています。

含まれる成分とリスク

生活排水には、界面活性剤(洗剤由来)や油分、塩分(ナトリウムなど)が含まれている場合があり、これらが土壌に蓄積すると通気性の低下、塩害、微生物バランスの変化などが生じる可能性があります。こうしたリスクを抑えるためには、pHとECを用いた水質管理が重要です。

pH・ECとは?|排水の水質評価に用いられる基本指標

pHとECは、水質を簡便かつ効果的に評価するための基本的な指標です。生活排水の再利用や適切な処理を行うためには、これらの数値を把握することが重要です。

pHとECとは?水質評価の基本指標

pHとECの基礎解説図|生活排水の水質管理に欠かせない2つの指標

pHとは?(酸性・中性・アルカリ性の目安)

pHは、水溶液の酸性度やアルカリ性度を示す値で、0〜14のスケールで表されます。

  • pH7未満 = 酸性(例:酢、雨水)
  • pH7 = 中性
  • pH7超 = アルカリ性(例:石けん水、洗剤)

生活排水では、洗剤や食品由来の成分により、pHが変動することがあります。適正なpH範囲を保つことは、再利用時の衛生性や水質安定の観点から重要です。

ECとは?(導電率:イオンの量の指標)

EC(Electric Conductivity)は、水に含まれるイオン(塩類や無機物)の総量を示す指標で、単位は「µS/cm(マイクロジーメンス毎センチメートル)」などが用いられます。

EC値が高いということは、洗剤成分や塩類などの溶解性物質が多く含まれていることを意味します。生活排水を再利用する際、このEC値が高すぎると設備や配管への影響、再利用先でのトラブルの要因となる場合があります。

なぜpHとECを測るのか?

pHが高すぎると…

生活排水のpHが高すぎる(アルカリ性に偏る)場合、以下のようなリスクが生じる可能性があります:

  • 配管や中和槽など設備の腐食・スケーリング
  • 活性汚泥法などによる微生物処理が不安定、処理効率が低下
  • 公共用水域に排出する場合、pH 5.8〜8.6(海域以外)を超えれば違反の可能性

そのため、排水水質はpH 6.5〜8.5 程度を目安に適切な中和処理を行うことが推奨されます。

参考:
環境省「一般排水基準」では公共用水域への排出時にpH 5.8〜8.6を求められています。:2025/8時点

ECが高すぎると…

EC(導電率)が高いということは、水中に塩類や洗剤成分などのイオンが多く含まれていることを意味します。生活排水においてECが高すぎると、以下のような問題が発生する可能性があります:

  • 配管や散水設備へのスケール(析出物)や閉塞の原因になる
  • 再利用水として利用する際、設備や用途によっては不適合と判断される可能性がある
  • 微生物処理工程における処理効率の低下などの技術的リスク

ECに関しては、法令による明確な数値基準は日本国内では設けられていませんが、ビル設備などで生活排水を再利用する場合、用途ごとに「建築設備設計基準」などの技術指針で水質の管理目安が示されています。

たとえば、トイレ洗浄水や植栽散水などの用途では、EC 1,000 μS/cm以下が望ましいとされるケースもあります。

参考:
・国土交通省「建築設備設計基準(2021年度)」にて、再生水のpH・EC管理の目安が用途別に示されています。

アメリカの現場での導入事例

アメリカのある企業では、ホテルチェーンの施設管理において生活排水の再利用に取り組んでいます。排水は、砂ろ過と消毒を経て灌水用途に活用され、その水質確認としてpHとECの測定が日常的に行われています。

持ち運び可能なポータブル測定器による現場管理

この企業では、従来のペン型テスターでは精度や耐久性に課題があったため、より正確で信頼性の高いポータブル測定器としてHI 991300Dを採用しました。

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まとめ

生活排水を安全に、そして持続的に再利用するためには、水質管理が欠かせません。pHとECという基本的な指標を定期的に確認することで、植物や土壌への悪影響を防ぎながら、環境負荷の少ない水利用が実現できます。

※本記事はHanna Instruments アメリカ本社の技術事例(No.09_012_14_001)を元に翻訳・編集しています。

世界46か国で展開する水質測定器の専門メーカー
ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社

参考文献・出典:
・U.S. Environmental Protection Agency (EPA). Guidelines for Water Reuse(2004)
・FAO. Water Quality for Agriculture(Irrigation and Drainage Paper 29)
・国土交通省 下水道部. 下水再生水の利用指針(2020年改訂)
・国土交通省「建築設備設計基準(2021年度)