PFAS(ピーファス)とは?2026年施行のPFOS・PFOA水質基準と「分析・処理」を支えるpH・温度管理(HI 520活用)
PFAS(有機フッ素化合物)とは?
PFAS(有機フッ素化合物)(以下PFAS)は、撥水・耐熱・耐薬品性などに優れ、フライパンのコーティングや食品包装、防水素材など幅広い用途で用いられてきた人工化学物質の総称です。1万種類以上が知られており、なかでも PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸) と PFOA(ペルフルオロオクタン酸) は環境中で分解されにくく、生物体内に蓄積しやすいことから、環境・健康リスクが懸念されています。
参考:環境省「PFAS対策について」
環境省によるPFAS(水道水中PFOS・PFOA)基準の厳格化
2025年6月30日、環境省はPFOS・PFOAを水道水の水質基準項目に新たに追加する省令を公布しました。
- 施行日:2026年4月1日
- 基準値:PFOSおよびPFOAの合算で 50 ng/L(0.00005 mg/L)以下
- 検査頻度:原則3か月に1回以上(水道事業者等に法的義務)
従来の「暫定目標値(努力義務)」から、法的な検査義務へと強化され、基準超過時は迅速な改善が求められます。
参考:環境省 報道発表(2025年6月30日)/
EnviX解説(施行・検査頻度)
PFAS規制と現場の課題:直接測定は現時点では困難(2025/09)
PFASの検査義務が強化されている一方で、現時点で現場で簡単にPFAS濃度を測る方法はありません。
PFASはLC–MS/MS(液体クロマトグラフ質量分析)などの高精度分析でのみ定量可能で、米EPAの公定法(Method 533 / 537.1)でもSPE(固相抽出)+LC–MS/MSが必須です。
👉 つまり、「PFAS濃度を直接測る」ことは現場ではできないのが課題です。
日常管理を支えるのは周辺指標(pH・温度)
では、工場や処理現場では何を測るべきか?
答えは、PFASの分析・保存・処理・分解を支える「周辺指標」です。代表的なのがpH・温度です。
- ① 分析前処理でのpH管理:
EPA Method 533では、試料に1 g/L酢酸アンモニウムを含む場合、そのpHを6~8に調整することが明記されています。pHはSPEカートリッジへの吸着効率を左右します。 - ② 保存・妨害低減:
極端な酸・アルカリ条件はPFASそのものより共存物質の変質や妨害を誘発。EPA法でも保存条件や妨害低減が規定されています。 - ③ 処理・分解プロセスの最適条件:
光触媒・プラズマ・強酸化剤などのPFAS分解技術は、pHや温度に依存して処理効率や副生成物が変動。工程管理には連続モニタリングが不可欠です。 - ④ 分解後の安全配慮(HFリスク):
PFAS分解でフッ化物イオン(F⁻)やフッ化水素(HF)が生成する場合があります。HFはガラスを侵すため、通常のガラス電極は損傷するリスクがあります。未分解PFAS水溶液では心配ありませんが、分解液のpH監視と電極材選定に注意が必要です。
現場での役割分担:分析は外部、モニタリングは現場
結論として、役割を分けて考えるのが現実的です。
項目 | 実施内容 | 実施場所 |
---|---|---|
PFAS濃度測定 | LC–MS/MSによる定量分析 | 分析機関・検査機関 |
pH・温度 | 処理効率・保存条件の安定化、副生成物の抑制 | 現場で連続モニタリング |
👉 この「二段構え」で、PFAS対策の安定運用・早期逸脱検知・放流水管理が実現します。
現場導入例:HI 520による多項目モニタリング
PFAS対策の現場監視には、多項目を連続モニタリングできる装置が有効です。
ハンナ インスツルメンツ・ジャパン㈱のHI 520は以下の特長があります。
- 多項目対応:pH/ORP/温度/EC(導電率)/濁度に対応
- アラーム・制御機能:設定逸脱で警報・薬注・バルブ制御の自動化が可能
- データロギング:長期データ収集で改善・監査・報告に活用
⇒ 製品ページ:HI 520

まとめ
- PFAS濃度は外部分析(LC–MS/MS)でのみ測定可能
- 現場でモニタリングすべきはpH・温度
- pH・温度は分析前処理・保存・処理効率・副生成物管理に必須
- HI 520は多項目監視+制御+データ管理に対応し、現場の安定運用を支援