冷却塔のレジオネラ属菌対策、残暑こそ見直しを|pH・EC・残留塩素で水質管理

測定器のレンタルとは?

冷却塔のレジオネラ属菌対策、残暑こそ見直しを
水質管理で「測れること・測れないこと」

夏のピークを越えると、冷却塔の管理も少し気が緩みがちです。
けれど、気温の高い時期が長引く今は、9月も油断できません。

ポイントは、菌検査だけに頼るのでも、日常の数値だけを見るのでもなく、清掃・換水・水処理・水質測定・専門検査を組み合わせることです。
たとえば、こんな変化はありませんか?

冷却塔はいつも通り動いている。薬剤も切れていない。
ところが、水槽の縁を触ると少しぬめりがあり、前回より導電率が上がっている。残留塩素を測ると、同じ注入設定なのに数値が安定しない――。

設備が止まるほどの異常ではなくても、こうした小さな変化は「水の中で何かが変わり始めている」サインかもしれません。

なぜ「夏の終わり」に冷却塔を見直すの?

気象庁が2026年8月25日に発表した9~11月の3か月予報では、全国的に平年より気温が高くなる可能性が高いと予想されています。

冷却塔は水の蒸発で熱を逃がす設備なので、運転を続けるほど水中の塩類が濃縮し、スケールやスライムが生じやすくなります。

厚生労働省の技術指針では、冷却塔はレジオネラ属菌が繁殖しやすい環境になり得るとされ、使用開始時および使用期間中は1か月に1回以上、冷却塔や冷却水の汚れを点検し、必要に応じて清掃・換水を行うこと、さらに1年に1回以上、清掃と完全換水を実施することが示されています。

横浜市も2026年3月更新の案内で、特に夏季はレジオネラ属菌が検出されやすいとして、設定任せにせず維持管理を行うよう注意を呼びかけています。

参考:
気象庁「向こう3か月の天候の見通し」
厚生労働省「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」
横浜市「冷却塔の維持管理について」

冷却塔の水は、循環している間に少しずつ変わる

冷却塔では、循環水の一部を蒸発させることで熱を外へ逃がします。
蒸発するのは主に水分なので、水に溶けていたカルシウムなどの塩類は循環系に残ります。

補給水を足しながら運転していても、ブローが不足すれば塩類は徐々に濃縮します。

蒸発が進む

塩類が濃縮する

スケールや汚れが付きやすくなる

微生物が定着しやすい場所が増える

さらに、屋外に開放された冷却塔には、ほこり、花粉、落ち葉なども入り込みます。これらが汚れやスライムの材料となることがあります。

バイオフィルムが形成されると、消毒剤が内部まで十分に作用しにくくなる場合があります。

ここで注意したいのが、「殺菌剤を入れているから大丈夫」という考え方です。殺菌剤は重要ですが、汚れや有機物などによって消費されるため、同じ薬注設定でも水中に残る濃度が変化することがあります。

だからこそ、薬剤の投入量だけではなく、実際の水を測り、目で見て、清掃状態も確認することが重要です。

日常管理で見たい4つのサイン

項目 確認できること 注意点
温度 運転条件の変化や、微生物が増えやすい状態を考える手がかり 温度だけで菌の有無は判断できません
pH 薬剤の働きや腐食・スケール傾向を管理する基礎データ 適正範囲は設備材質、薬剤、管理方式によって異なります
導電率(EC) 蒸発による濃縮や、補給水・ブロー運転の変化 特定の成分濃度を直接示す値ではありません
残留塩素
※塩素系殺菌剤を使用している場合
塩素系殺菌剤が水中にどの程度残っているか 管理目標は処理計画に従い、薬剤メーカーや専門業者に確認します

大切なのは、単発の「正常値」よりも、同じ場所・同じ時間帯・同じ手順で記録した推移です。

普段の範囲から外れたときに、ブロー量、補給水、薬注、清掃状況などを早めに確認できます。

pHは、薬剤の効き方や設備への負担を見る土台

pHは、単に「酸性かアルカリ性か」を示すだけではありません。使用している薬剤の働き方、金属の腐食、スケールの生じやすさを考える土台になります。

ただし、適正なpHは冷却塔ならすべて同じではありません。配管や熱交換器の材質、補給水の水質、使用薬剤によって管理範囲が変わるため、設備ごとの管理値と照らして確認します。

導電率(EC)は「水の濃縮」をつかむ手がかり

導電率(EC)は、水中に溶けているイオンの量によって変化します。冷却塔では、補給水と循環水のECを比較することで、蒸発による濃縮の進み具合を把握する手がかりになります。

ECが急に上がった場合は、ブローが十分か、給水や制御に変化がないかを確認します。反対に急低下した場合も、大量の補給水流入や測定条件の違いなどを確認する材料になります。

ECで特定成分の濃度は分かりません
ECは、「カルシウムが何mg/Lある」といった個別成分の濃度を直接示す値ではありません。原因成分を特定したい場合は、別の項目測定や専門分析が必要です。

残留塩素は「投入量」ではなく、採水した水で確認する

塩素系殺菌剤を使用する場合、ポンプの設定値や薬剤消費量だけを見ても、循環水中に遊離残留塩素がどの程度残っているかは分かりません。

汚れ、有機物、日射、温度、滞留時間などの影響を受けるため、実際に採水して測定することが重要です。

測定は、採水してから時間を置きすぎず、毎回同じ位置・条件で行います。容器の汚れや試薬の期限、セルの指紋・気泡などでも値がぶれるため、測定手順を標準化しておくと比較しやすくなります。

数値は「組み合わせ」で見る

たとえば、ECがいつもの範囲を超え、残留塩素が下がり、目視でもぬめりが増えていたら、ひとつの測定ミスとして片付けず、ブロー、薬注、清掃の状態をまとめて確認します。

一方、ECだけが急に変わった場合は、補給水の変化や測定器の校正なども含めて切り分けます。複数項目を見ることで、次に確認すべき場所を絞りやすくなります。

測定器でレジオネラ属菌は分かる?

結論:pH計、EC計、残留塩素計で、レジオネラ属菌そのものを検出することはできません。

これらの測定器で確認できるのは、設備の運転状態や水処理を管理するための指標です。
菌の有無や菌数を確認するには、培養法などによるレジオネラ属菌検査が必要です。状況によりPCR法やLAMP法などの迅速検査が用いられる場合もあります。

また、残留塩素が管理目標内でも、スケールやバイオフィルムの内部まで十分に作用しているとは限りません。

目視点検と物理的な清掃を省略せず、異常値、著しい汚れ、設備トラブルがある場合は、設備管理会社や検査機関へ相談しましょう。

「測っている」だけではなく、異常時の動きを決めておく

測定記録があっても、基準から外れたときの対応が決まっていなければ、現場では判断が止まってしまいます。

管理表には数値だけでなく、たとえば次のような「異常時の行動」も決めておくと実用的です。

  • 再測定する
  • 薬注設備を確認する
  • 責任者へ連絡する
  • 設備や清掃状態を確認する
  • 必要に応じて専門業者へ採水検査を依頼する

特に、清掃後も数値が戻らない、残留塩素が極端に不安定、スライムが短期間で再発する、異臭や濁りが続くといった場合は、日常測定だけで結論を出さず、設備全体の点検や専門検査へ進みます。

レジオネラ属菌の検査結果が出た場合も、数値だけを下げる対処ではなく、発生源やバイオフィルムを含めた再発防止が必要です。

今週できる冷却塔のチェックリスト


冷却塔のチェックリスト

  • 下部水槽や充填材などに、スライム、藻、堆積物、目詰まりがないか確認する
  • pH、EC、温度、残留塩素を決めた採水点で測定し、前回値と比べる
  • 補給水量、ブロー量、薬剤残量、注入設備の動作を確認する
  • 清掃・完全換水・専門検査の実施日と次回予定を確認する
  • 数値の変化と作業内容を同じ記録表に残す

点検の順番は、まず安全を確保して目視し、次に採水・測定、その後に設備の設定や記録と照合する流れが分かりやすいです。

先にブローや薬注設定を変えてしまうと、「変更前に何が起きていたか」が分からなくなるため、可能であれば変更前の値を記録しておきます。

測定値のルールは設備ごとに
本記事は一般的な管理の考え方です。法令・自治体の指導、設備仕様、水処理薬剤の管理基準、保守会社の手順を優先してください。

まずは短期間、現場の数値を見える化

「残暑の間だけ測定を強化したい」「購入前に現場で使い勝手を確かめたい」という場合は、測定器のレンタルも選択肢です。

pHやECなど複数の水質項目をまとめて確認できるHI 98194や、低濃度の遊離残留塩素0.00~5.00 mg/Lを測定できるHI 97701など、目的や測定環境に合わせて選びます。


残留塩素計 HI97701

レンタル前に整理しておきたいのは、次の4点です。

  1. どの項目を測りたいか
  2. 想定濃度はどの程度か
  3. 何か所で何回測るか
  4. 測定記録を残す必要があるか

残留塩素計は機種ごとに測定範囲が異なり、多項目測定器も測定場所や必要な項目によって選び方が変わります。

「とりあえず一番高機能なもの」ではなく、現場の管理項目と測定方法に合った機種を選ぶことが大切です。

冷却水の測定に使える製品

投げ込み式多項目測定器 HI 98194
pH、ORP、EC、DO、温度など複数の水質項目を1台で測定できます。冷却水の状態を複数の指標から確認したい場合に活用できます。
⇒ HI 98194の製品情報を見る

ポータブル デジタル残留塩素計 HI 97701
DPD法により、遊離残留塩素を0.00~5.00 mg/Lの範囲で測定できます。
⇒ HI 97701の製品情報を見る

まとめ:レジオネラ属菌対策は「測定+清掃+専門検査」で

冷却塔では、水の蒸発による濃縮や汚れの蓄積によって、運転を続ける中で水質や設備の状態が少しずつ変化します。

pH、EC、温度、残留塩素などを継続的に測定することで、普段とは異なる変化に気づく手がかりになります。

ただし、これらの測定器でレジオネラ属菌そのものを確認することはできません。

日常の水質測定だけで完結させず、清掃・換水・水処理・目視点検・専門的な菌検査を組み合わせて管理することが重要です。

冷却水の測定についてのご相談
測定項目、想定濃度、採水場所、測定頻度などをお知らせください。用途に合った測定器や測定方法をご案内します。

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参考情報

※本記事は一般的な水質管理の考え方を紹介するものです。実際の管理では、法令、自治体の指導、設備仕様、水処理薬剤の管理基準、保守会社の手順などを優先してください。