ぶどうの収穫、糖度だけで決めて大丈夫?|ワインのpH・総酸度(TA)を測る理由

測定器のレンタルとは?

2026年のぶどう収穫、糖度だけで決めて大丈夫?
ワインのpHと総酸度を測る理由

ぶどうの収穫期が近づくと、気になるのは糖度。
でも、ワインの味わいや発酵の進み方を考えるなら、pHと総酸度(TA)も一緒に見たいところです。

数字を増やすことが目的ではなく、畑と醸造の判断を共通のデータで話せるようにすることがポイントです。

「糖度は十分。でも、もう少し待つべき?」

収穫前の畑では、こんな迷いが起こります。
天気予報では数日後に雨。糖度計の数字は目標に近い。一方で、口に含むとまだ酸が鋭く、種には青さが残る房もある。

逆に、よく熟した区画では酸が急に落ちているように感じる――。

収穫日はひとつの数字で決めるのではなく、複数の情報を重ねて決めるから難しく、同時にワイン造りの面白さでもあります。

高温の年は、成熟の「バランス」を見たい

気象庁は2026年7月中旬~下旬の顕著な高温を公表し、8月も西日本を中心にかなり高い気温が多くなる見込みを示しました。
農林水産省も、ぶどうでは高温による着色不良や着色遅延、日焼け果などの影響が報告されていると整理しています。

暑い年に「糖度が上がったから、すぐ収穫」と決めると、酸の状態や香味、果皮・種子の成熟とのバランスを見落とすことがあります。

収穫日は品種、産地、天候、目指すワインのスタイルで変わるため、糖度、pH、総酸度、官能評価、果実の状態を合わせて判断します。

参考:

気象庁「2026年7月中旬~下旬の顕著な高温と今後の見通しについて」


農林水産省「取組による産地の優位性の発揮」

成熟が進むと、ぶどうの中では何が起きる?

ぶどうが熟すにつれて、一般に糖は増え、酸は減っていきます。

特にリンゴ酸は高温条件で減りやすく、暑い年には糖の上昇と酸の低下がいつもと同じペースで進まないことがあります。

そのため、糖度だけを見ると「収穫できそう」でも、ワインにしたときの酸の骨格や微生物管理を考えると、別の判断が必要になる場合があります。

糖度は成熟の一面

pHは酸の状態

総酸度(TA)は滴定で捉える酸の量

香味・果皮・種子・天候と合わせて収穫判断

また、pHと総酸度は単純な裏表ではありません。
果汁中の酒石酸やリンゴ酸、それらの塩、カリウムなどのバランスによって、総酸度が近くてもpHが違うことがあります。

ここが「酸っぱいかどうか」だけでは読み切れない部分です。

pHと総酸度は、似ているようで別の数字

項目 ざっくり言うと 醸造で役立つ場面
pH 酸の「強さ」や水素イオンの状態を表す指標 微生物管理、色調、酸化、亜硫酸管理などを考える基礎
総酸度(TA) 滴定で捉える酸の「量」の指標 成熟度の確認、味のバランス、酸調整などの判断材料
糖度(Brix) 果汁中の可溶性固形分を示す指標 成熟の進み具合や、発酵後のアルコール見込みの参考

pHが同じでも総酸度が違うこと、総酸度が近くてもpHが違うことがあります。

オーストラリア・ワイン研究所(AWRI)も、総酸度はぶどうの成熟度の監視や、ワインの官能特性・熟成管理に関わる指標と説明しています。

参考:

Australian Wine Research Institute「Scope of operation」

pHが教えてくれること

pHは、酵母や乳酸菌、腐敗微生物が活動しやすい環境か、色調や酸化がどう変化しやすいか、亜硫酸をどのように管理するかを考える基礎になります。

ただし、pHだけを見てワインの「酸味の強さ」を決めつけることはできません。味わいには総酸度、糖、アルコール、温度なども関わるからです。

総酸度(TA)が教えてくれること

総酸度は、決められた終点までアルカリで滴定し、試料中の酸を量として捉える分析です。

収穫前の成熟推移、仕込み時の酸のバランス、発酵後の調整検討などに使われます。

手滴定でも測れますが、終点判断、滴下量の読み取り、撹拌の違いが結果に影響するため、担当者が変わっても同じ手順で測れる仕組みが重要です。

同じ糖度でも、判断が同じとは限らない

隣り合う2区画の糖度が同じでも、一方はpHが高めで総酸度が低下傾向、もう一方は酸がまだ保たれていることがあります。

前者では酸をこれ以上落としたくない判断があり得ますし、後者では香味や天候を見ながら待つ余地があるかもしれません。

どちらが正解かは目指すスタイル次第ですが、pHとTAがあれば、その判断を後から振り返れます。

測る前の「サンプリング」が結果を左右する

畑の一部だけから、色の良い粒だけを採ると、数字は実際より偏ります。

Virginia Techのワイン研究資料でも、収穫時期の判断には代表性のあるサンプリングと成熟評価が重要とされています。

  1. 区画を分ける:品種、樹齢、斜面、日当たり、土壌条件が違う場所は別に採る
  2. 偏りなく採る:房の上・中・下、日なた側・日陰側などから複数粒を集める
  3. 同じ手順で搾る:搾り方や果皮との接触条件をそろえる
  4. 同じタイミングで記録する:採取日時、区画、天候、糖度、pH、TA、味の所見を残す
  5. 推移を見る:一回の値で決めず、数日おきの変化を比べる

参考:

Virginia Tech「Grape Sampling and Maturity Evaluation for Growers」

コツは「正しい数字」より「比べられる数字」
毎回の採り方と測り方をそろえることで、区画差や成熟の進み方が見えやすくなります。

採取から測定まで、結果をぶらさないための実務ポイント

代表性のある粒を集めたら、清潔な器具で果汁をつくり、よく混ぜてから分取します。

pHとTAで別々の果汁を使う場合も、元になる混合試料は同じにします。

採取から測定までの時間や試料温度が毎回ばらばらだと、畑の変化なのか測定条件の違いなのか分かりにくくなります。

pH測定で起こりやすいミス

  • 校正を行わず、前回の状態のまま測り始める
  • 電極の液絡部に果汁の成分が付着したまま使い続ける
  • 値が安定する前に記録する、または電極を試料へ浅く入れすぎる
  • 測定後の洗浄・保管を誤り、次回の応答が遅くなる

果汁は水よりも成分が多く、一般的な水質測定より電極が汚れやすい試料です。
用途に合う電極を選び、洗浄液・保存液を正しく使うことが、測定器本体の精度と同じくらい大切です。

総酸度測定でそろえたい条件

試料量、滴定液、終点、撹拌条件をそろえます。

手滴定から自動滴定装置へ切り替える場合は、従来法との比較を複数回行い、社内の基準や記録方法を決めておくと移行がスムーズです。

発酵中や発酵後のワインでは二酸化炭素が滴定に影響することもあるため、測定法に沿った前処理を確認します。

測定器で分かること、専門判断が必要なこと

pH計や自動滴定装置は、果汁・ワインのpHや総酸度を数値化する道具です。

しかし、測定値だけで最適な収穫日、完成ワインの品質、安全性を保証することはできません。

外部分析や専門家への相談も使い分けましょう。
微生物検査、残留農薬、酒税法や表示に関わる分析、精密な成分分析などは、対応する検査機関・醸造責任者へ確認してください。
酸や亜硫酸の添加判断も、免許・法令・製造計画に沿って行います。

収穫時の記録は、翌年の畑にも返ってくる

測定データは、その年の収穫日を決めるためだけのものではありません。

区画別の糖度・pH・TA、収穫日、収量、発酵経過、完成したワインの評価をひとつにつなげると、
「この区画は高温年に酸が落ちやすい」
「この品種は収穫直前の変化が速い」
といった傾向が見えてきます。

翌年は、その記録をもとにサンプリング開始を早めたり、区画を分けて仕込んだり、分析頻度を増やしたりできます。

数字の価値は、測った瞬間よりも、次の判断に使えたときに大きくなります。

収穫期だけ使うなら、レンタルという方法も

小型自動滴定器HI 84502は、ワインの総酸度測定に特化し、pH測定にも対応します。

より多様な分析を行いたい場合は、電位差自動滴定装置 HI 931という選択肢もあります。

HI 931は、高精度な電位差滴定に対応した自動滴定装置で、ワイン分野ではSO₂、TA、YANなどの測定にも活用されています。:contentReference[oaicite:1]{index=1}

収穫・仕込みの期間だけ試したい、今の手分析と比較したい、来季の導入前に運用を確かめたい。
そんなときは、購入前のレンタルが始めやすい方法です。

レンタルを検討する際は、1日に測る検体数、測定したい項目、現在の分析方法、誰が操作するかを伝えると機種を選びやすくなります。

総酸度を中心に手軽に始めるのか、複数項目をまとめて管理するのかで、必要な機器と試薬は変わります。

収穫直前では準備が慌ただしくなるため、操作確認や従来法との比較期間も含めて、早めに相談するのがおすすめです。

ワイン分析に使える測定器

ワイン用ミニ自動滴定器 HI 84502
ワインの総酸度測定に特化し、pH測定にも対応しています。

⇒ HI 84502のレンタルを見る

電位差自動滴定装置 HI 931
高精度な自動滴定に対応し、ワイン分野ではSO₂、TA、YANなどの分析にも活用されています。

⇒ HI 931のレンタルについて確認する

まとめ:収穫判断は「糖度+pH+総酸度」で立体的に

ぶどうの成熟を見るとき、糖度は重要な指標です。

ただし、糖度だけでは酸の状態や、ワインにしたときのバランスまでは分かりません。

糖度、pH、総酸度(TA)、官能評価、果実の状態、天候を組み合わせて見ることで、収穫判断をより多面的に考えることができます。

また、測定値を区画ごと・年ごとに記録しておけば、そのデータは翌年以降の栽培・醸造判断にも活用できます。

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測定したい項目、検体数、現在の分析方法をお知らせいただければ、用途に合った測定器や試薬をご案内します。

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参考情報


※本記事は一般的な情報です。品種・産地・醸造方法に応じ、醸造責任者や専門機関の判断を優先してください。測定器の仕様・レンタル条件は各製品ページでご確認ください。