川の水質調査、何を測る?ごみ拾いの効果を比べる5つのポイント

測定器のレンタルとは?

川の水質調査、何を測る?ごみ拾いの効果を比べる5つのポイント

川辺や海岸からペットボトルや空き缶がなくなると、景色は見違えるほどきれいになります。それは大切な成果ですが、見た目がきれいになったことと、水の中の状態が改善したことは同じではありません。清掃と水質測定を組み合わせると、活動の成果と次の課題が、もう少し具体的に見えてきます。

清掃後の川を見て、「水質も良くなったはず」と感じた。
ところが測ってみると、濁度は雨の影響で前回より高く、DOは時間帯によって大きく違った。これは清掃が無意味だったという話ではありません。ごみの量、水の濁り、溶けている物質、栄養塩、生きものの状態は、それぞれ異なるものを見ているからです。

世界クリーンアップデーを、水を知る入口に


世界クリーンアップデーなどの河川・海岸清掃活動の様子

毎年9月20日は、国連が定めた「世界クリーンアップデー」です。2026年も9月を中心に全国各地で清掃活動が呼びかけられており、環境省と瀬戸内海関係14府県では、9月から11月にかけて瀬戸内海流域一斉清掃への参加を呼びかけています。

また環境省では、水辺・海辺の環境保全や活用、地域づくりに関する情報共有の場として、「水辺の環境活動プラットフォーム」の取組も進めています。清掃をきっかけに、ごみだけでなく水辺の状態にも目を向けるにはよい時期です。

ごみ拾いは、環境へ流出したプラスチックや缶などを回収し、地域の関心を高める活動です。一方、水質測定は、その時点の水の状態を数値として記録する活動です。目的が違うからこそ、組み合わせることで水辺の状態をさまざまな角度から見ることができます。

「きれいな水」を一つの数字で表すことはできない

水には、目で見える濁りだけでなく、溶けている物質、酸素、微生物などさまざまな要素があります。何のための水かによって、見るべき項目も変わります。川で生きものが暮らせるかを見たいのか、排水の影響を追いたいのか、安全に飲めるかを確かめたいのかで、必要な調査は同じではありません。

項目 主に分かること 分からないこと
濁度 水中の細かな粒子によるにごり 粒子が土砂か微生物かなど、その成分の特定
pH 酸性・アルカリ性の状態 有害物質や病原体の有無
DO 水中に溶けている酸素量 酸素量が変化した原因の特定
COD 所定の条件で酸化剤により消費される酸素量に換算した指標 物質の種類、毒性、発生源の特定
全窒素・全リン 水中に含まれる窒素・リンの総量。富栄養化の状態を考える指標の一つ その場の藻類発生原因を単独で特定すること

ごみを拾った直後に測れば、効果が分かる?

必ずしも分かるとは限りません。清掃で回収できるのは、主に河岸や水面にある固形ごみです。水に溶けた物質や上流から流れてくる負荷、生活排水、農地・道路からの流出は、清掃直後に大きく変わらないことがあります。

さらに、清掃のため川底へ入れば泥が舞い上がり、一時的に濁度が上がることもあります。直後の一回だけで「悪化した」「改善した」と結論づけず、可能であれば上流側など比較地点を設定し、活動地点と組み合わせて複数回測定します。水位・流量、潮の影響、直前の雨も残しておくと、清掃以外の変化を考えやすくなります。

それでも観察できるのは水質との関連であり、清掃の効果を因果関係として証明するものではありません。

比較地点を決める → 清掃前後・別日に測る → 雨・水位・流れも記録する → 傾向を見る
例:ごみは減ったのにCODが変わらない
目に見えるごみの回収成果と、CODが反映する水中の状態は、見ている対象が異なります。CODが変わらなかったからといって、清掃が無意味だったとは言えません。ごみの重量や種類は清掃活動の成果として、CODは水質の観察値として分けて記録すると、それぞれの変化を整理しやすくなります。

比較できる測定にする5つのルール

  1. 比較する地点を決める:可能であれば上流側などの比較地点Aと活動地点に近い地点Bを決め、地図や写真で次回も同じ場所を確認できるようにします。
  2. 時刻をそろえる:DOやpHは時間帯によって変化することがあるため、できるだけ同じ時間帯に測ります。
  3. 雨・水位・流れを残す:前日までの雨、増水、潮汐なども濁りや測定値に影響します。
  4. 採水手順をそろえる:深さ、容器、すすぎ、分析までの時間などの条件をそろえます。pHやDOは現場での測定が基本となる場合もあるため、使用する測定方法や手順に従います。
  5. 複数回で見る:一回の値だけで判断せず、季節や活動回ごとの推移を確認します。

測定値には、地点名、時刻、天候、水温、流れの様子、におい、色、写真などを添えます。必要に応じて位置情報も記録しておくと、次回も同じ地点で測定しやすくなります。数値がいつもと違ったときも、雨の影響なのか、採水地点がずれたのか、別の流入があったのかを考える手がかりになります。

記録例
上流A|9:00|水温22.4℃|DO 8.1 mg/L|濁度3.2 NTU|前日雨なし
下流B|9:20|水温22.8℃|DO 7.6 mg/L|濁度5.1 NTU|回収ごみ12.4 kg

このように測定条件もセットで残しておくと、数字だけを記録するより次回との比較がしやすくなります。

濁度を測るとき、セルの汚れも測定値に影響する

濁度計は、試料に光を当て、粒子による散乱などを利用して測定します。セルに指紋、水滴、傷、気泡などがあると、測定値に影響することがあります。試料を泡立てないよう穏やかに均一化し、採水から測定までの時間、セルの向き、拭き方などの条件をそろえて測定します。

HI 98703は、川へ直接センサーを入れる機器ではなく、採水した試料を専用セルに入れて測定するポータブル濁度計です。現場でセンサーを直接水中に入れる測定方式とは条件が異なるため、取扱説明書に沿って毎回同じ手順で測定します。

CODは採水してすぐ数字が出る項目ではない

CODは、試薬の添加や加熱分解、反応時間などを伴う分析です。日本の環境基準では、河川の有機汚濁の指標として主にBOD、湖沼・海域ではCODが用いられています。

HI 83314のCOD測定には二クロム酸法(CODCr)が採用されています。日本の環境基準などで用いられる過マンガン酸法(CODMn)とは測定方法が異なるため、測定値をそのまま同一のものとして比較することはできません。同じ測定方法・条件を継続して変化を見る用途と、公的な基準への適合判定は分けて考える必要があります。

全窒素・全リンを含め、測定範囲、妨害物質、ブランク、試料の保存・前処理なども確認します。試料の性状が分からない場合は、使用する試薬や測定方法への適合性を確認してから測定します。

COD測定では試薬の取り扱いにも注意が必要です。
COD測定に使用する試薬には、二クロム酸カリウムなど有害性・腐食性等に注意が必要な成分を含むものがあります。学校や市民参加型の活動、設備のない屋外などで使用する場合は特に安全管理が必要です。使用する試薬の安全データシート(SDS)と取扱説明書を確認し、適切な保護具、加熱設備、保管方法、廃液処理などを含めた環境を整えてください。

測定器だけでは「安全な水」と判定できない

pH、DO、濁度、COD、窒素・リンを測定しても、飲用の安全性を判断することはできません。
大腸菌などの微生物、農薬、PFAS、重金属、油、有機化学物質などは、それぞれ適切な採水・前処理・分析方法が必要です。

異臭、魚のへい死、油膜、着色、急激な数値変化などを見つけた場合は、むやみに触れず、自治体の環境担当部署などへ相談します。

また、河川の環境基準との正式な適合判定には、公定法、測定地点、測定頻度、品質管理などが関わります。地域活動で得られた測定値は、水質の変化に気づき、必要に応じて専門的な調査へつなげるための情報として活用します。

短期の環境調査なら、レンタルで測定項目を増やせる

初めて水質調査を行う場合は、目的に合わせてpH、DO、濁度など比較的現場で確認しやすい項目から始める方法があります。COD、全窒素、全リンなど試薬や前処理を伴う項目まで広げる場合は、測定方法だけでなく、安全な作業環境や廃液処理についても確認します。

秋の短期調査で濁度を測るなら、セル式ポータブル濁度計HI 98703のレンタルも選択肢の一つです。COD、全窒素、全リンなど複数項目を測定したい場合には、吸光光度計HI 83314があります。HI 83314でCOD等を測定する場合は、別途試薬や試験管ヒーター、安全な作業環境、適切な廃液処理などが必要です。

ご相談の際には、調査の目的、対象となる水、測定したい項目、想定濃度、採水地点数、測定日数、屋外・室内などの使用環境をお知らせいただくと、機種を選定しやすくなります。正式な証明や規制への適合確認が目的の場合は、必要な分析方法や外部検査機関の利用についても事前に確認してください。

河川・環境調査に使える測定器

ポータブル濁度計 HI 98703
採水した試料を専用セルに入れて濁度を測定。河川や環境調査など、短期間の水質調査にも利用できます。

⇒ HI 98703のレンタルを見る

濁度計

全窒素・全リン・COD測定器 HI 83314
COD、全窒素、全リンなど複数項目の測定に対応した吸光光度計です。測定項目によって試薬や試験管ヒーターを使用します。

⇒ HI 83314のレンタルを見る

COD計

⇒ 環境調査向けレンタル一覧を見る

まとめ:清掃の成果と水質の変化は、分けて記録する

ごみ拾いで目に見えるごみが減ることは、それ自体が活動の大切な成果です。一方、水質には雨、流量、上流からの流入、時間帯などさまざまな条件が影響するため、清掃前後の一回の測定だけで「水質が改善した」と判断することはできません。

測定地点や時刻などの条件をできるだけそろえ、pH、DO、濁度などの測定値と、天候や水位、ごみの回収量などを一緒に記録しておくと、活動を重ねる中で水辺の変化を比較しやすくなります。

測定器で分かる範囲と分からない範囲を理解したうえで、普段と違う変化を見つけるための一つの手段として、水質測定を活用してみてください。

河川・環境調査の測定についてのご相談

測定したい水、項目、調査期間、使用場所などをお知らせください。目的に合った測定器や測定方法をご案内します。

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参考情報

※本記事は一般的な水質調査・環境活動の考え方を紹介するものです。河川・海岸で活動する際は、管理者の許可や安全管理、増水・潮位などの情報を確認してください。公的な基準への適合確認や飲用の安全性確認が必要な場合は、所管行政機関や専門の検査機関へご相談ください。製品仕様・レンタル条件は各ページで最新情報をご確認ください。