データセンターの冷却水、導電率が上がるのはなぜ?密閉系でも起こる水質変化とは

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データセンターの冷却水、導電率が上がるのはなぜ?密閉系でも起こる水質変化とは

「冷却水には純水を使っているし、配管の中を密閉状態で循環しているのだから、水質は変わらないのでは?」

データセンターの液冷設備について、このように考える方もいるかもしれません。確かに、純水はイオン成分が少なく、密閉された冷却ループは外部からの異物混入を抑えやすい構造です。

しかし、純水を使用し、配管が密閉されていても、冷却液の性質が変化しないとは限りません。冷却液と接する材料や、液体中で起こる化学的な変化によって、導電率(EC)が変化する可能性があります。

この記事では、データセンターの液冷設備を対象に、純水でも導電率が変化する仕組みを化学反応の例から解説します。さらに、コールドプレート式と液浸式の違いや、実際に導電率が変化したときの確認ポイントも紹介します。

この記事でわかること

・純水でも導電率が変化する理由
・密閉された冷却ループで考えられる水質変化
・コールドプレート式と液浸式で異なる水質管理の対象
・導電率が変化したときの確認ポイント

純水なのに導電率が変わる?化学反応から考える

純水は、水に含まれるイオン成分などの不純物を取り除いた水です。ただし、純水だからといって、周囲の物質と反応しないわけではありません。

導電率は、液体の電気の流れやすさを示す指標です。水系冷却液では、水に溶け込んでいるイオンの種類や濃度、温度などによって導電率が変化します。

純水はもともとの導電率が非常に低いため、少量のイオン成分が加わることでも、測定値の変化として現れる可能性があります。

例① 二酸化炭素(CO2)が水に溶けると?

身近な例として、二酸化炭素(CO2)が水に溶ける場合を考えてみましょう。

CO2が水に溶けると、その一部は次のような平衡反応によって、水素イオン(H+)と炭酸水素イオン(HCO3-)を生じます。

CO2が水に溶けたときの反応(簡略式)

CO2 + H2O ⇌ H+ + HCO3−

CO2が水に溶けることで、電気を運ぶイオンが生じます。

この反応で生じるH+やHCO3-は電気を運ぶイオンです。そのため、水中のイオン成分が増えると、導電率が上昇する要因になります。

米国国立標準技術研究所(NIST)の研究論文では、25℃における理論上の純水の導電率は約0.055 µS/cmであり、空気中のCO₂と平衡になった純水の導電率は、実験室の大気圧などの条件によって0.7〜1.3 µS/cmの範囲になると説明されています。

CO2との接触による導電率の違い(25℃の例)

・理論上の純水:約0.055 µS/cm
・空気中のCO2と平衡になった純水:約0.7〜1.3 µS/cm

※空気と接触した純水の例です。密閉されたデータセンターの冷却ループで、同じ数値になることを示すものではありません。

では、密閉された配管内でも、このような変化は起こり得るのでしょうか。

ASHRAEの技術資料では、IT機器側の水系冷却ループにおける導電率上昇の要因として、CO2の透過を含むイオン性成分の侵入が挙げられています。

ただし、完全に気密で、新たなCO2の侵入がない冷却ループに、この例をそのまま当てはめることはできません。実際に変化が起こるかどうかは、配管材料や設備構成、運転条件などによって異なります。

例② 金属からイオンが溶け出す場合

もう一つ考えられるのが、冷却液と接する金属材料からのイオン溶出です。

例えば、銅が酸化されて銅イオンになる反応は、次のような半反応式で表せます。

銅が酸化される反応(半反応式)

Cu → Cu2+ + 2e−

銅が電子を失い、銅イオンになる反応を表しています。

仮に冷却液中へ銅イオンが溶出すれば、液体中のイオン成分が変化し、導電率に影響する可能性があります。

ただし、これは反応の仕組みを示す例であり、銅製の配管やコールドプレートを使用していれば必ずこの反応が進むという意味ではありません。実際の反応には、電子を受け取る反応も必要であり、溶存酸素、pH、冷却液の組成、添加剤などの条件によって挙動が異なります。

ASHRAEの技術資料でも、冷却ループを構成する材料からのイオン溶出が、導電率上昇の要因の一つとして挙げられています。

ここが重要です

純水は、イオン成分が少ない状態の水であり、化学反応が起こらない水ではありません。また、密閉された配管であっても、冷却液と接する部材との相互作用までなくなるわけではありません。

ただし、導電率の上昇だけで腐食や設備の異常を断定することはできません。

密閉された冷却配管なら、水質は変わらない?

冷却水

データセンターの液冷システムでは、冷却液を循環させ、サーバーなどから発生する熱を運びます。密閉された冷却ループは、外部からの成分混入を抑え、冷却液の状態を安定させやすい構造です。

しかし、設備が密閉されていても、冷却液は配管、継手、熱交換器などの部材と接触しています。また、使用する材料によっては、気体などの成分が透過する可能性もあります。

ASHRAEの技術資料「Water-Cooled Servers」では、IT機器側の水系冷却ループについて、導入当初は導電率の要件を満たしていても、時間の経過とともに数値が上昇する場合があると説明されています。

その要因として、構成材料からのイオン溶出、CO2の透過を含むイオン性成分の侵入、添加剤による影響などが挙げられています。

つまり、「密閉されているから外部からの混入が少ない」ということと、「内部の冷却液が変化しない」ということは、分けて考える必要があります。

コールドプレート式と液浸式、水質管理の対象は同じ?

データセンターの液冷方式には、主にコールドプレート式と液浸式があります。どちらも液体を利用して熱を運びますが、使用する冷却液や設備構成は異なります。

そのため、液冷設備の水質管理では、どの液体を、どの冷却ループで測定するのかを確認することが重要です。

コールドプレート式:IT機器側の水系冷却ループ

コールドプレート式は、CPUやGPUなどの発熱部に取り付けた冷却プレートへ冷却液を流し、熱を回収する方式です。

水系冷却液を使用する設備では、サーバー内部のコールドプレートにつながる冷却ループが、水質管理の対象になります。

CDU(Coolant Distribution Unit:冷却液分配装置)を介して設備側とIT機器側の冷却ループを分離する構成では、それぞれの水質管理条件が異なります。

ASHRAEでは、設備側の冷却水とIT機器側の冷却液について、異なる水質要件を適用する必要があると説明しています。

液浸式:液浸槽内の冷却液と設備側の冷却系を区別

液浸式は、サーバーなどの電子機器を電気絶縁性のある冷却液に浸し、発生した熱を回収する方式です。

液浸槽内では、一般に誘電性冷却液が使用されます。これは、水系冷却液とは性質が異なるため、通常の水質管理用導電率計による測定を、そのまま当てはめることはできません。

一方、液浸式の設備でも、熱交換器などを介して熱を受け取る冷却ループに水系の液体を使用する場合があります。その水系冷却ループでは、設備仕様に応じて導電率やpHなどが管理項目になることがあります。

なお、液浸式の冷却系には複数の構成があり、熱交換器につながるすべてのループが水系とは限りません。実際の使用流体と設備構成を確認する必要があります。

冷却方式 主な冷却液 導電率管理の考え方
コールドプレート式 水系冷却液など 水系冷却ループでは、設備仕様に応じてECを管理
液浸式の液浸槽 誘電性冷却液 一般的な水質用EC測定とは異なる管理が必要
液浸式の設備側冷却系 水系冷却液など(設備構成による) 水系の場合はECが管理項目になることがある

今回解説する導電率の変化は、コールドプレート式だけに限定されるものではありません。ただし、対象となるのは主に水系冷却液を使用する冷却ループであり、液浸槽内の誘電性冷却液とは区別して考える必要があります。

密閉された冷却ループで、導電率が変化する主な要因

純水を使用していても、導電率が変化する可能性があることを紹介しました。実際の設備では、次のような要因も確認対象になります。

配管や構成部材との相互作用

冷却液と接する配管、継手、熱交換器などの材料によっては、イオン成分の溶出などが起こる可能性があります。

ただし、導電率の変化だけで、どの部材が原因なのかを特定することはできません。冷却液と材料の適合性や、設備の状態などを合わせて確認する必要があります。

設備接続時の成分混入

新たなサーバーや配管を接続する際、洗浄が不十分な部材などから成分が持ち込まれる可能性があります。

ASHRAEの技術資料でも、設備の接続時に汚染物質が持ち込まれる可能性について説明しています。

添加剤や冷却液の組成変化

水系冷却液には、設備の仕様に応じて腐食抑制剤、微生物対策用の薬剤、pH調整剤などが使用される場合があります。

こうした成分が導電率に影響することもあるため、添加剤の投入後に数値が変化した場合は、冷却液の組成や管理基準を確認することが重要です。

導電率の上昇=冷却液の劣化、とは限りません。

導電率は水質変化の手がかりになりますが、数値だけで腐食や冷却性能の低下を判断することはできません。設備や冷却液に定められた管理範囲と照らし合わせて考えることが大切です。

導電率が変化したときに確認したいポイント

冷却液の導電率が以前と異なる場合、まずはその変化が実際の水質変化によるものなのか、測定条件によるものなのかを確認しましょう。

特に、次のような項目が確認の手がかりになります。

確認項目 確認したい内容
測定値の推移 急に変化したのか、時間をかけて変化したのか
測定条件 温度補償、校正状態、測定位置などに違いはないか
設備の変更 サーバーや配管の追加、部材の交換、洗浄作業などはなかったか
冷却液の管理履歴 補給液や添加剤の投入、冷却液の交換などはなかったか
その他の管理項目 pHなど、指定された水質項目にも変化がないか

導電率は温度の影響を受けるため、測定器の温度補償設定などにも注意が必要です。測定条件が異なると、冷却液そのものが変化していなくても、表示値に差が生じる場合があります。

なお、管理範囲を外れた場合は、設備メーカーや冷却液メーカーの指示、施設の管理手順に従って対応してください。

なぜ導電率を継続的に確認することが重要なのか?

密閉された冷却ループでは、冷却液の状態が安定している場合もあります。そのため、導電率を一度測定しただけでは、その後の変化を把握できません。

ASHRAEの技術資料では、導電率を経時的に記録し、数値の変化や管理範囲からの逸脱があった場合、その原因を理解することの重要性が示されています。

例えば、設備の増設やメンテナンスの前後で測定値を比較することで、作業と水質変化の関係を確認する手がかりになります。

測定方法には、定期的に採水して確認する方法と、センサーによって連続的に監視する方法があります。必要な監視頻度や方法は、設備規模、管理基準、運用上のリスクなどを踏まえて検討することが大切です。

まとめ|純水・密閉系でも、水質変化の可能性を考える

データセンターの液冷設備では、純水を使用し、冷却液が密閉された配管内を循環していても、構成材料との相互作用や成分の侵入などによって、導電率が変化する場合があります。

純水は、イオン成分が少ない水であり、化学反応が起こらない水ではありません。また、密閉された冷却ループであっても、内部材料との相互作用までなくなるわけではありません。

ただし、密閉された冷却ループで必ず導電率が上昇するわけではなく、数値の上昇がそのまま設備の異常を意味するわけでもありません。

・純水でも、イオン成分の変化によって導電率が変わる可能性がある
・密閉系でも、冷却液と構成材料の相互作用は起こり得る
・コールドプレート式と液浸式では、管理する液体を区別する
・単発の数値だけでなく、経時的な変化を確認する

冷却液の状態を適切に把握するためには、設備や冷却液の仕様を確認し、必要な項目を継続的に管理することが重要です。


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参考情報の確認日:2026年10月16日