校正証明書とは?検査成績書・トレーサビリティ書類との違い

Q&A

校正証明書とは?検査成績書・トレーサビリティ書類との違い

「監査で、校正証明書とトレーサビリティ体系図を見せてくださいと言われた。でも、どの書類を用意すればよいのだろう?」

測定器を使用する製造現場や品質管理部門では、校正に関する書類の違いや、必要な書類の選び方に迷うことがあります。

校正証明書、検査成績書、トレーサビリティ証明書、トレーサビリティ体系図。名称は似ていますが、それぞれ確認できる内容や役割は異なります。

大切なのは、書類を一式そろえることではなく、「誰に、どの測定結果について、何を説明する必要があるのか」を整理することです。

11月1日の「計量記念日」を前に、校正の基本から必要書類の違い、校正周期、日常管理のポイントまで確認してみましょう。

この記事でわかること

・校正と合否判定、調整、検証の違い
・校正証明書と検査成績書の役割
・トレーサビリティ証明書と体系図の違い
・JCSS校正証明書と体系図の関係
・校正周期と日常点検の考え方
・ハンナへ校正を依頼する際の確認事項

そもそも「校正」とは?合否判定とは違う?

計量学における校正とは、測定器の指示値と、基準となる値との関係を明らかにすることです。

例えば、基準となる値に対して測定器がどのような値を示すかを確認し、その関係を把握します。

ただし、校正を実施したことと、その測定器が使用目的に適していることは同じではありません。

校正結果を受けて、その測定器を使用できるかどうかを判断するには、測定目的や製品規格、顧客要求、社内の管理基準などを確認する必要があります。

pH計の「校正操作」と外部校正は同じ?

pH計では、標準液を使って機器の校正操作を行います。

一般的なpH計の校正操作は、標準液を基準に電極の応答を機器へ設定・調整するためのものです。

一方、外部校正では、定められた方法や条件に基づいて測定器の指示値と基準値との関係を確認し、その結果を記録します。

どちらも「校正」という言葉を使いますが、実施する作業や目的は同じとは限りません。

そのため、日常の標準液による確認、機器の校正操作、必要に応じた外部校正を、それぞれの役割に応じて組み合わせることが重要です。

似た言葉の違いも確認しましょう

校正
測定器の指示値と基準値との関係を明らかにすること。

調整
測定器が所定の指示を示すよう、状態や設定を変更すること。

検証
定められた要求事項を満たしているか、客観的な証拠に基づいて確認すること。

※実務では一連の作業として実施される場合もあります。記録には、実際に行った作業と結果を明確に残すことが大切です。

校正証明書・検査成績書・トレーサビリティ書類の違い

測定器の校正に関係する書類には、いくつかの種類があります。

ハンナ インスツルメンツ・ジャパンの校正料金一覧では、校正証明書、検査成績書、トレーサビリティ証明書、トレーサビリティ体系図について、機器ごとの対応状況を案内しています。

ただし、書類の名称や記載内容、発行方法は、発行元や校正サービスによって異なる場合があります。

ここでは、各書類の主な役割を整理します。

書類 主な役割 確認したい内容
校正証明書 対象機器について校正を実施したことや、校正に関する情報を示す 機器の識別情報、校正日、校正項目、発行者、記載された結果など
検査成績書 測定・検査で得られた数値などの結果を示す 測定点、基準値、指示値、差、測定条件など
トレーサビリティ証明書 校正に使用した標準器や標準とのつながりに関する情報を示す 証明の対象、標準器に関する情報、発行者、関連書類など
トレーサビリティ体系図 使用した標準器から上位の標準へ至る関係を図で示す 標準器や校正機関のつながり、対象となる測定項目など

例えば、校正を実施したことを示す書類があっても、確認したい測定点や実際の測定結果が十分に記載されていない場合があります。

そのような場合には、検査成績書など、数値を確認できる書類の内容が重要になります。

一方、取引先や監査担当者から国家計量標準へのトレーサビリティについて説明を求められた場合は、どのような書類による確認が必要なのかを整理する必要があります。

ポイント:書類の名称だけで判断しない

校正証明書に測定結果が記載される場合もあり、必ずしも「校正証明書には数値がない」「検査成績書にしか結果がない」という区分ではありません。実際に必要な情報が記載されているか、発行元の書式を確認することが大切です。

JCSS校正証明書があれば、トレーサビリティ体系図は必要ない?

はてな

JCSS(計量法トレーサビリティ制度)は、計量法に基づく計量標準の供給と校正事業者の登録に関する制度です。

JCSS登録事業者が登録範囲内で発行するJCSS標章付きの校正証明書は、国家計量標準への計量トレーサビリティを示すものです。

経済産業省の「計量標準FAQ(全般)」では、JCSS校正証明書に加えてトレーサビリティ体系図の提出を求められた場合について説明されています。

同FAQによると、ISO 9001の要求事項として国家計量標準との関係を確認する目的であれば、JCSS校正証明書のみで問題なく、別途トレーサビリティ体系図を提出する必要はないとされています。

ただし、取引先との契約や個別の証明目的など、別の理由で体系図を求められる場合は、提出が必要となることもあります。

注意:一般校正とJCSS校正は区別しましょう

メーカーなどが提供する一般校正と、JCSS登録事業者が登録範囲内で実施するJCSS校正は、同じものではありません。また、すべての測定器や測定項目でJCSS校正に対応できるわけではありません。必要な場合は、対象となる測定量や校正範囲を確認してください。

参考:経済産業省「計量標準FAQ(全般)」

「校正書類を一式ください」の前に確認したい4つのこと

必要な書類を過不足なく準備するには、依頼前に確認したいポイントがあります。

1.誰が書類を求めているのか?

社内監査、認証機関、取引先、行政機関など、書類を確認する相手によって求められる情報が異なる場合があります。

まずは、誰が何を確認するために書類を必要としているのかを整理しましょう。

2.何の測定に使用する機器なのか?

製造工程の監視、製品の合否判定、研究開発、参考測定など、測定器の用途によって管理上の重要度は異なります。

測定結果が製品品質や安全性に与える影響も考慮し、必要な管理方法を検討します。

3.どの測定範囲・校正点が必要なのか?

校正書類を準備する際は、普段使用している測定範囲と、校正を実施する点が適切に対応しているかを確認することが重要です。

例えば、pH計を特定の範囲で使用しているにもかかわらず、実際の使用条件と関係の薄い校正点だけで評価している場合、目的に合った確認ができない可能性があります。

ただし、校正点は必ず使用範囲のすべてを網羅する必要があるという意味ではありません。測定目的や要求される精度、校正方法などを踏まえて選定します。

4.どの形式の書類が必要なのか?

一般校正の書類でよいのか、JCSS校正証明書が指定されているのか、検査成績書の数値まで必要なのかを確認します。

顧客指定の書式や記載事項がある場合は、依頼前に伝えることが大切です。

監査担当者や取引先に確認したい質問例

・校正を実施した証明が必要ですか?
・校正点ごとの測定結果も必要ですか?
・国家計量標準へのトレーサビリティを示す書類が必要ですか?
・JCSS校正証明書の指定はありますか?
・指定の書式や校正周期はありますか?

校正証明書に有効期限はある?校正周期の決め方

測定器の校正について、「年1回実施すればよいのか」「校正証明書の有効期限はいつまでなのか」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

校正周期は、すべての測定器について一律に年1回と決まっているわけではありません。

一般的には、メーカーの推奨、顧客要求、使用頻度、使用環境、測定結果の重要度などを踏まえて設定し、過去の校正結果や機器の状態に応じて見直します。

校正証明書に記載されている校正日は、校正を実施した時点を示すものです。その日から一定期間、測定器の性能が保証されるという意味ではありません。

次回の校正時期は、適用される要求事項や社内の管理方法に基づいて決定します。

なお、法令、顧客仕様、業界規格、社内規程などで校正周期が定められている場合は、それらの要求事項に従う必要があります。

外部校正だけでなく、日常点検も重要

定期的に外部校正を実施していても、その間に測定器の状態が変化する可能性があります。

例えば、電極の汚れや劣化、機器への衝撃、不適切な保管などによって、測定結果に影響が生じる場合があります。

そのため、外部校正の管理だけでなく、日常の標準液による確認、電極の洗浄・保管、必要に応じた交換などを組み合わせることが大切です。

pH計で記録しておきたい項目の例

・測定器の管理番号、電極の識別情報
・使用した標準液の値、ロット番号、有効期限
・校正・確認を実施した日時
・実施担当者
・電極の状態、洗浄や交換の履歴
・異常が見つかった場合の対応内容
・必要に応じた確認用標準液による検証結果

※必要な記録項目は、機種や測定目的、社内手順によって異なります。測定器に保存されるGLP情報だけで、社内で必要とするすべての記録を満たすとは限りません。

校正証明書があれば、測定結果は正しいと判断できる?

校正証明書は、測定の信頼性を確認するうえで重要な記録ですが、日々の測定結果の正しさを自動的に保証するものではありません。

例えば、pH計では次のような要因が測定結果に影響する場合があります。

・電極の汚れや劣化
・標準液の汚染や管理状態
・試料の温度や温度補償の取り扱い
・試料の撹拌状態や測定位置
・電極の応答が安定するまでの時間

また、EC(導電率)計では、セル定数の設定、温度補償、標準液の状態、電極への気泡の付着や汚れなどが測定結果に影響する場合があります。

校正時点で良好な結果が得られていても、その後の使用環境や取り扱いによって機器の状態が変化する可能性があります。

したがって、測定の信頼性を説明するためには、校正書類に加え、測定手順、日常点検、担当者への教育、異常値が出た際の対応なども含めて管理することが重要です。

測定器の校正だけでは判断できないこと

pH計やEC計を校正しても、試料中の細菌・ウイルス、個別の化学物質、毒性、アレルゲンの有無などを判定できるようになるわけではありません。確認したい対象に応じて、適切な分析方法や検査を選ぶ必要があります。

ハンナへ校正を依頼するときに伝えたいこと

ハンナ インスツルメンツ・ジャパンでは、pH計、EC計、残留塩素計、吸光光度計、DO計、濁度計などについて、校正料金と対応書類の目安を公開しています。

ただし、対応可能な書類や校正内容は、測定器の種類・機種・測定項目によって異なります。

特に多項目測定器では、必要な測定項目や校正点を事前に整理しておくことが重要です。

校正の相談・見積もり時に伝えたい項目

・機種名、製造番号、台数
・必要な測定項目と、普段使用する測定範囲
・希望する校正点
・必要な書類と顧客指定の書式
・希望納期、次回の使用予定

必要な校正内容や書類が決まっていない場合も、使用目的や提出先から整理することで、確認すべき事項が明確になります。

ハンナの校正料金・対応書類を確認する

機器の種類ごとに、校正料金の目安と対応書類を掲載しています。校正点数や機種によって内容が異なるため、詳細はお問い合わせください。


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短期間の使用なら、測定器のレンタルも選択肢

一時的な測定や、測定器の使用期間が限られている場合には、レンタルを検討する方法もあります。

ハンナの公式レンタルサービスでは、製品によってトレーサビリティ証明書の発行に対応しています。

ただし、すべての機種で対応できるわけではありません。また、校正証明書や検査成績書など、別の書類が必要な場合は個別の確認が必要です。

レンタルを検討する際も、使用期間だけでなく、測定目的と必要書類を見積もり時に伝えることをおすすめします。

測定器のレンタルについて

pH計やEC計をはじめ、さまざまな測定器のレンタルに対応しています。必要書類の発行可否についても、機種ごとにご確認ください。


⇒ ハンナ公式レンタルサイトはこちら

まとめ|監査前に、校正書類と日常の測定管理を見直そう

校正証明書、検査成績書、トレーサビリティ証明書、トレーサビリティ体系図には、それぞれ異なる役割があります。

書類を準備する際は、名称だけで選ぶのではなく、誰に何を示す必要があるのかを確認することが大切です。

監査前に確認したい4つのポイント

・必要な書類は、提出先と確認目的から判断する
・校正結果の数値や校正点が、使用目的に合っているか確認する
・校正周期は、要求事項や使用状況、過去の結果を踏まえて管理する
・外部校正だけでなく、日常点検・標準液・電極管理・記録も組み合わせる

測定器の書類は、集めること自体が目的ではありません。

測定器がどのように管理され、測定結果をどのような根拠で使用しているのかを説明できることが重要です。

11月1日の計量記念日をきっかけに、保管している校正書類だけでなく、日々の測定方法や記録についても見直してみてはいかがでしょうか。

校正書類・測定器についてのご相談はこちら

必要な測定項目、校正点、書類の種類など、使用目的に応じたご相談を承ります。短期間の使用では、レンタルの対応可否についてもお問い合わせください。


⇒ ハンナ インスツルメンツへのお問い合わせ

参考情報

※必要な校正方式、書類、校正周期は、適用される法令・規格、顧客要求、社内規程、測定目的などによって異なります。個別の適合性については、監査担当者、顧客、認証機関などへご確認ください。