陸上養殖でアンモニアを解消する4つの方法

水産養殖・アクアリウム

 養殖の悩みの種と言えば水質管理でありアンモニアの処理です。アンモニアは強い毒性を持つため、タンク内のアンモニア濃度が高ければ魚の死と直結し経済損失は免れません。本記事ではアンモニアが魚にどのような影響を与えるのか、その処理方法と付き合い方について解説します。

水質測定器メーカー ハンナ インスツルメンツ・ジャパン
アンモニアの監視・管理は陸上養殖に限らず魚を扱う事業において最重要課題です。生物濾過やオゾン殺菌などの方法をご紹介致します。
世界46か国で展開する水質測定器の専門メーカー
ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社 営業部 高梨

アンモニアの特徴

ammonia
 アンモニアの発生源は餌と糞で、他に死骸なども要因となります。タンク内のアンモニア濃度は低ければ低いほど良いのは想像に容易いですが、水が循環しないと底部にアンモニアが滞留していきます。

 さてタンク内のアンモニア濃度が高まると、アンモニア中毒を起こして魚は排泄しにくくなります。また鰓(えら)からアンモニアを血液中に取り込んでしまいます。体内に取り込まれたアンモニアは魚の神経系に影響し、鼻上げや挙動不審を起こし、やがて横たわって死ぬのが典型例です。これは魚だけでなくエビでも共通して見受けられる症状で、一般にアンモニア濃度が0.25mg/L(ppm)を超えるとその症状が現れるため定期的な確認が必要になります。

アンモニアを解消する4つの方法

1.水替え


 最も手っ取り早い方法が飼育水を入れ替えてしまう事です。これは最後の手段とも言え、閉鎖循環式の環境に外界から水を加えることは細菌も混入するリスクを含んでいます。殺菌システムが完備されている状態であったとしても、そのリスクとは隣り合わせになります。また水を注入排出するための設備を用意するにはコストが嵩むため、へい死による損害額との折半は避けられません。エビなどの病気に強い種を飼育されるケースに適しています。

2.生物ろ過

 生物ろ過は最も一般的な解消法です。バクテリアを活用した硝化サイクルを利用して硝酸塩に変換させ、最後は脱窒システムを通じて窒素ガス化させます。ノウハウや実績も豊富なため採用されています。

3.ナノバブル、UFB


 硝化サイクルをより活発にする方法は、好気性バクテリアに酸素を与えることです。アンモニア➡亜硝酸塩➡硝酸塩と硝化させるのは好気性バクテリアの仕事、好気性バクテリアは酸素を好むため溶存酸素濃度を高めることで活発化します。

 主流はファインバブルをタンク内に投入することで、バクテリアが酸素を獲得できやすくなります。ポイントはバブルが水中でどれだけ持続するかで、マイクロバブルに対してナノバブル・UFB(ウルトラファインバブル/直径1μm未満)は半年以上とも言われる持続性の長さ※1が特徴で、溶存酸素濃度を長期間維持できます。ナノバブル下のアンモニア処理に関する研究も行われており、ナノバブルの導入は進んでいくと見られます。※2

 溶存酸素濃度は水温に影響し、温度の上昇と反比例して濃度が減少するので管理はマストです。酸素を供給してバクテリアが活性化しているかを知る指標がORP(酸化還元電位)になりますので、こちらも確認されると信憑性が向上します。

 加えてリン酸塩はバクテリアのエネルギーとなり、増殖を支える効果があります。濃度の監視が必要になりますが、硝化サイクルを支える新たなファクターとして注目されています。

4.オゾン殺菌

 オゾン(O3)はアンモニアや有機物の分解に有効な酸化剤です。アンモニアの除去だけでなく殺菌や変色の除去にも効果があるため、水質改善の強い味方となります。オゾン殺菌を用いた研究では水質が最大で50%以上の改善が見られておりその有用性が立証されています。※3 ※4

 自然界にも存在する物質なのでサスティナビリティの視点からも注目されており、海外で実績はあるが国内実績も徐々に増え始めていますが、まだまだ少ないのが現状です。というのもオゾンを水に溶かす槽、オキシダント除去層など必要な設備が多く、そもそも海外の大規模な養殖場に合わせて開発されたためオーバースペックになる背景もあります。日本の規模にマッチしたオゾン殺菌装置、さらに溶かしこむ濃度のノウハウが確立すれば、非常に魅力的でポテンシャルのある殺菌方法です。

まとめ

 養殖事業者にとって病気と水質はつねに注視するファクターで、永続的な付き合いが必要な物です。アンモニアを一気に窒素化させてしまうラジカル方式の研究も兆しを見せていますが、事業規模にマッチした方法でアンモニア・水質をコントロール方法を確立しましょう。

 ハンナではpH、塩分、溶存酸素、ORPを1台で計測できる測定器や、アンモニア、亜硝酸塩、硝酸塩を1台で測定できる測定器をご用意。お気軽にお問い合わせください。
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水産養殖カタログ


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参考文献:
※1
Introduction of sansho-pepper flavor to water by using nano-bubbles generator
and its application to the field of food manufacturing 日本混相流学会年会講演会 2012

※2
Basic Research on Bacteria Contributing to the Disposal
of Ammonia Generated by Residual Feed. 2022 奥村組技術研究年報 No.48

※3
Ozonation control and effects of ozone on water quality in recirculating aquaculture systems. 2018 Aikaterini Spiliotopoulou.

※4
オゾン年鑑. 93-94年度版